少し旧聞に属するが、今年、球界の話題で驚いたものの1つに中日大野雄大の「発言」がある。ご存じの方も多いだろうが、少しだけ振り返りたい。今年の球宴、富山で行われた第3戦でファンの前を通り、出場選手が球場入りするイベントでのことだ。

ここで大野は阪神のユニホームを着て登場したのである。宿舎に中日のユニホームが届かず、坂本誠志郎から借りたものを着用したという。そこで大野はこんな話をした。「正直、夢、かないました。エエ感じにタイガースのユニホームを着られた」-。

関西出身の大野が虎党なのは有名な話だ。過去、FAで移籍する可能性もあった。しかし中日にとどまり、今月で38歳になる今も主力投手として君臨している。19年9月14日のナゴヤドーム(当時)では“ノーノー”をくらったことも。そんな男が阪神のユニホームを着て「夢がかなった」と堂々と言ったのには、正直、驚いたのである。

その大野、これが球宴後初の阪神戦登板だ。今季ここまで阪神戦の成績はよくなかった。試合前まで防御率2・09だったが阪神相手では2試合に投げて1敗、同5・40。だからこそ、あの発言があって「どんな投球をするのか」と見ていたが、その思いをぶつけるかのように? 阪神打線を牛耳った。打球が野手の正面をつく幸運もあったが森下翔太、佐藤輝明に大きな仕事をさせなかったのである。

「やっぱり、うまいですからね。そんなに簡単に連打、連打というのは。相手が上回ったというところですね」。指揮官・藤川球児も大野を褒めるしかなかったのだ。

試合そのものは空中戦の部類だった。上林誠知の2ランで中日に先制され、大山悠輔のソロで1点を返した6回に、またサノーの2ラン。今季、本塁打数「101」でリーグトップの阪神が、これも「95」と肉薄している中日との本塁打合戦に負けたとも言える。

そんな中で、いいなと思ったのは9回の攻撃だ。クローザー松山晋也から代打・元山飛優の安打でチャンスをつくり、途中出場の高寺望夢の適時打で1点を返した。大味なゲームの中、最後にこういう得点の仕方が出たのは意味がある。

2位・巨人は打ち合いの末、ヤクルトを下し、ゲーム差は「2・5」と縮まった。28日の直接対決まで、名古屋であと2試合だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)