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ヨシネーのひとりごと

創志学園・赤塚拓海と悲しくも心が温かくなった再会

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 第100回全国高校野球選手権大会で、うれしい再会がありました。

 「メンバーに入れました!」

 8月3日、甲子園見学会で声をかけてくれたのは、創志学園の背番号18、赤塚拓海選手(投手・3年)でした。


 それは2年前-。同サイト内・アスレシピで、創志学園の登録外選手による補食のうどん作りを取材した時のことでした。右腕にギプスをつけて、うどん作りに参加している選手。それが、赤塚選手でした。右肘靱帯再建手術を受け練習に参加できず。メンバーのサポートに回っていたころでした。

 あれから2年。右肘も完治し、ユニホーム姿での再会にうれしくなりました。約1年のリハビリからの復帰で、きっと猛練習をしたのでしょう。そんな思いで赤塚選手に話しかけたところ、予想外な言葉が返ってきました。

 「2年前の9月14日、母が脳梗塞で倒れたんです。母が僕のリハビリを支えてくれました」。

 突然の告白に、ただただ驚くばかりでした。

 

 赤塚選手のお母さん(名苗さん)が倒れたその日は、秋季岡山県大会の真っ最中。お父さんは、チームに帯同している本人に心配させまいと、試合終了後に伝えました。

 「急いで病院に駆けつけると、母は集中治療室に入っていました。寮生活でしばらく会っていなかったんですが、久しぶりに会った母は、すっかり痩せ細って…僕、ベッドの横で号泣しちゃって。母に小さい声で『泣きすぎよ』って言われちゃいました」


 お母さんが倒れる3日前は、ちょうど赤塚選手の誕生日。お母さんはバースデーカードを書いて、机の上に置いたまま倒れていたそうです。

 「母の病気に比べれば、僕のケガなんてたいしたことない。母のためにも、元気に頑張っている姿を見せよう。そう思うようになりました」

 お母さんが懸命にリハビリに励む姿に、赤塚選手も元気をもらいました。ときには、お互いに「頑張ろう」と励ましあいながらのリハビリ。赤塚選手は元気に練習に復帰。お母さんは左半身が不自由になってしまいましたが、リハビリで右半身と、話すことは回復しました。

 そして-バースデーカードは、赤塚選手の宝物になりました。練習バッグに入れて肌身離さず持ち歩き、今ではもうボロボロになってしまったとか。

 「持ち歩けないほどになってしまって、今は寮の机の引き出しに大事にしまってあります。母がいなかったら、僕の心は折れていたかもしれない。でも、“あなたも頑張って”という言葉にどれだけ助けられたかわかりません」


 8月14日。2回戦の下関国際戦には、岡山からお母さんが車いすで応援に駆け付けてくれました。

 「昨夜、母に電話したら『いつも通り、できることを頑張って』と言ってくれました」

 残念ながら試合出場はありませんでしたが、赤塚選手はお母さんの言葉通り、「今、自分がチームのためにできること。ベンチワークを精いっぱいやる」と心に決め、攻守交代には先発の西純矢選手(投手・1年)に付ききりでサポート。ベンチから大きな声を出し、盛り上げました。

 試合は4対5で負けてしまいましたが、試合後「ケガをして辛いことばかりだったけど、支えてくれたお母さんには感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうと言いたいです」と、涙で真っ赤な目で話してくれました。


 アスレシピ取材で出会い、そしてうれしい再会。それは、悲しくもどこか心があったかい。これまでにない再会になりました。


 「3年間で学んだことを生かして、大学でも頑張りたいと思います」

 また、いつか会える日を楽しみに。そして、今度はマウンドで躍動している姿に会いたい。そんな思いで、甲子園を後にする赤塚選手を見送りました。

2年前、まだ手術をした後でギプスをしていた赤塚選手(写真右)
2年前、まだ手術をした後でギプスをしていた赤塚選手(写真右)

◆保坂淑子(ほさか・よしこ)秋田県生まれ。フリーライター、エディター。日刊スポーツ出版社刊「プロ野球ai」デスク、「輝け甲子園の星」の記者を務める。「輝け甲子園の星」では“ヨシネー”の愛称で連載を持つ。著書に「監督心」、「主将心」(実業之日本社)「東浜巨 野球日誌が語る22年」(小学館)など。

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