酒田南に新怪物が現れた。今秋から4番に座る伊藤海斗外野手(1年)が6回1死満塁から、決勝の右越えグランドスラムを放ち、県4連覇を狙っていた日大山形を7-3で圧倒した。昨年、中日にドラフト3位で指名された石垣雅海内野手(19)以来の1年生4番が、3年連続14度目の東北大会出場に導いた。今日24日の決勝は東海大山形と対戦する。

 腰がねじれ切れるぐらいのフルスイングだった。0-1の6回1死満塁。伊藤海は4球目の真ん中高め直球をしばき上げると、弾丸ライナーで右翼席に突き刺した。一塁を回った直後に右腕で豪快にガッツポーズ。新怪物は悠然とダイヤモンドを1周した。

 伊藤海 まずうれしい。ホームランも、満塁弾も公式戦初。通算5本目です。一塁を回って観客が騒いでいたので、思わず右手が出た。頭が真っ白になった。

 山形・遊佐町出身で、185センチ、85キロの恵まれた体格を誇る。子供の頃から1日に牛乳を2リットル飲んで作り上げた体に、けた外れのパワーが秘められている。鈴木剛監督(36)からは「しっかりバットを振れるのは、相手にとって脅威になる」と評価され、今秋から4番を任されている。

 1年生の4番抜てきは、昨年中日に入団した石垣以来。右打ちと左打ちの違いはあるが「1年時点での飛距離は石垣よりも伊藤の方が上」と絶賛する。伊藤海も「(石垣さんは)酒田南の4番として、ここぞという時に打ってきた。4番が変なスイングをしたら駄目。流れが悪くなる」と自慢のフルスイングでチームをけん引する。

 チーム内では「アナコンダ」と呼ばれている。蛇と似た? 顔立ちに、入学当初は体をクネクネ動かす打ち方だったこともあり、名付けられた。あだ名同様、1度食い付いた獲物は逃がさない。「俺が甲子園に連れてってやるぐらいの気持ちで酒田南に来た。東北大会でも暴れる。全部“満振り”でいきたい」と鼻息は荒い。酒田南に現れた新怪物が、秋優勝どころかセンバツ切符まで奪い取ってみせる。【高橋洋平】

 ◆伊藤海斗(いとう・かいと)2001年(平13)4月2日、山形・遊佐町生まれ。兄の影響で5歳から野球を始め、遊佐中では軟式野球部に所属。3年時に県大会で優勝し、東北大会に出場。酒田南で1年夏に背番号13で初ベンチ入り。185センチ、85キロ。左投げ左打ち。家族は両親、姉、兄、妹。