秘密兵器の誕生だ! 第90回記念選抜高校野球大会(23日開幕、甲子園)に36年ぶり4度目出場の日大山形が17日、大阪・枚方市内で現地入り後初の練習試合2試合を行った。昨秋の公式戦で、わずか1/3回しか登板機会のなかった中坪豪汰(3年)が宇治山田商(三重)相手に1失点完投勝利。佐藤洸太(3年)、近藤皓介(3年)を含めた、タイプの違う3本柱が本番仕様となった。第3日第3試合の智弁学園(奈良)戦に向け、荒木準也監督(46)も手応えを得た。

 168センチ右腕の中坪が、マウンド上でダイナミックな姿を披露した。宇治山田商戦に先発。大きく振りかぶり、ゆっくりと高く足を上げる。止まっているかのように力をため、闘志むき出しに打者に向かう。最速138キロながら、7安打1失点完投勝利。2度の連続を含む計8奪三振1四球。「いつも多い四球が少なかった。粘れた。自分の持ち味は気持ちを込めた直球。甲子園でも気合で抑えたい」。宮崎合宿から続く好調さを大阪でも継続した。

 昨秋の県大会準決勝酒田南戦での悔しさを糧とした。2番手として公式戦初登板も2安打2四球2失点の乱調。わずか1/3回で降板。荒木監督から背番号16のユニホーム姿のまま、本塁打を打たれた近藤と2人で、学校までのランニングを課せられた。街中を約25キロ。保護者や市民の声援が、より屈辱だった。中坪は「申し訳ない気持ちと、悔しさが入り交じっていました」。今冬、1年時に審判から注意されて断念した2段モーションを再び再開。下半身中心のトレーニングの成果で、体重も4キロ増。より力強く改良し、新フォームを磨いた成果が結実した。

 荒木監督も「無駄な四球がなかったことが成長。ハートもあるし、直球のキレもあってファウルや空振りがとれる。秘密兵器になりそう」と期待。昨秋の東北大会でエース番号の田中が、左肩痛で離脱した危機を救う存在にもなった。第1試合の興国(大阪)戦で先発した、経験ある左腕近藤は6回3失点の粘投に「甲子園ではもっと強気にインコースを攻めたい」。1番を背負う佐藤洸も、自身のミスもあって2失点したが「マウンドに上がった人がエース。派手な投球は出来ないが、しっかり打ち取りたい」と“登板争い”も激しさを増す。

 初戦で対戦する智弁学園は、出場36校中1位の打率4割2分3厘、平均得点10・25点の強力打線。同監督は「それぞれ持ち味があるし、3人でまかなえる。勝ちたい」。東北勢初の頂点は、3人の肩にかかっている。【鎌田直秀】