創立133年の伝統校が初めて東北大会に乗り込む。宮城では、東北学院が3位決定戦で聖和学園に4-1で逆転勝ち。夏を含めて過去最高だった8強の壁を破った勢いのまま、春秋通じて初の東北切符も勝ち取った。エース右腕・井上聖南(2年)が完投。打っても9回に今大会初安打から決勝の生還につなげた。同じく、創立110年を誇る山形学院も初の東北切符を劇的に勝ち取った。これで、6月6日開幕の東北大会(山形)に出場する全18校が決定した。

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2年生エースのたくましい右腕が、東北学院の歴史を塗り替えた。井上は尻上がりに調子を上げ、5回2死から13人連続アウトで危なげなくゲームセット。ラスト110球目は空振り三振に仕留めると、雄たけびを上げた。

初回は先頭にストレートの四球。2回には自らの失策から1死二、三塁とピンチを広げ、内野ゴロの間に先制点を許した。ただ切り替えも早く、「上半身のバランスが悪かったのでフォームを変えた」とセットやグラブの位置などで調整しながら、右肩が下がる悪癖を修正。3回以降に出した走者は安打の2人だけだった。同点の9回は左二塁打で先頭出塁。1死後、1番喜早大次郎内野手(3年)の中前打で三塁を蹴った。スタートが遅れ、足も決して速くないが、執念で決勝ホームへ滑り込んだ。

井上は「誰よりも気が強い」(渡辺徹監督=48)という理由で、昨秋から背番号1に。今春の地区予選は背番号10でスタートしたが、中部決勝で仙台育英に1-13と大敗。ムードを変えるため、井上が「1」に戻った。期待に応えて「暑くてしんどかったけど、東北大会に出る目標をかなえることができた。長い学院の歴史の中で達成できたのはうれしい」と笑顔だった。

1886年(明19)の創立。野球部は1972年(昭47)の創部で、準決勝進出は創部48年目で初の快挙だった。それでも今世紀だけで夏6度の8強に入るなど力を付けてきた。渡辺監督は「1つ高いステージに上がった。選手には大きな財産。これ以上ない、夏へのきっかけにできたら」と満足せず、新たな1ページを書き加えていく。【中島正好】