さあ決勝で、最高のリベンジだ。履正社(大阪)が近畿対決となった準決勝で、明石商(兵庫)・中森俊介投手(2年)から初回に4得点を奪うなど快勝。1番桃谷惟吹外野手(3年)が5試合連続で第1打席に安打を放つなどけん引した。

5戦連続2桁安打も記録し、豪快に同校初の夏の決勝進出を決めた。22日決勝の相手は星稜(石川)。センバツは奥川恭伸投手(3年)に3安打17奪三振の完封負けを喫したが、その雪辱へ、最高の舞台が整った。

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先頭打者の一打から履正社打線がいきなり火を噴いた。1回表、1番桃谷の第1打席だ。120キロ台のフォークなどを見送り、カウント3-1から高めに浮いた5球目のチェンジアップを捉えた。中堅フェンス最上部に直撃する三塁打。「1番(打者)が大好き。自分が打って、チームに勢いを与えたい」という天性の切り込み隊長が、突破口を開くと、151キロ右腕の中森から、初回に打者一巡の攻撃で4点を先制した。

桃谷はこれで全5試合に初回先頭で出塁。1回戦の霞ケ浦(茨城)戦の先頭打者弾から振り返ると、本塁打→二塁打→単打→二塁打→三塁打と「初回サイクル」の5打数5安打だ。

そんな快打の裏にあるのが、履正社の春からの成長だ。岡田龍生監督(58)は言った。「中森君は奥川君レベルの投手。よく粘った」。ともに150キロ超の本格派右腕で、切れ味のいいスライダーをはじめ、落ちる球もチェンジアップを主にするなど共通点が多く、「仮想奥川」ともいえる。そんな強敵に対抗するため、1番桃谷は「チームとして低めの変化球を見切ることを徹底した」という。主砲・井上も初回に「低い変化球を振らなかったら、高めに来る」と直球を左前に運び、追加点に貢献。打つ球を見極め、中森から5回までに10安打5得点。会心の勝利だった。

その「強打の履正社」を生んだのは、22日決勝でぶつかる奥川だ。センバツでは、奥川の宝刀スライダーにもてあそばれ、17三振。岡田監督は「奥川君と対戦しトップレベルが分かった」と原点とする。以降は「対応力」をテーマに掲げてきた。鍛え上げられた打線は霞ケ浦・鈴木寛人投手(3年)や最速152キロ右腕、津田学園(三重)・前佑囲斗投手(3年)ら難敵を次々と崩し、全5試合で2ケタ安打をマークした。

春の屈辱から約5カ月。指揮官は「自分たちのやってきたことは間違いじゃないと思っていると思う。今まで積み上げてきたものを出せる環境を整えてあげたい」。悲願の初優勝を狙うに、申し分ない相手が待っている。【望月千草】

▽履正社・池田(初回無死三塁から先制打)「いい投手になればなるほど、ポイントを近くする。体に近づけることでボールがよく見える。低めの変化球の見極めを意識していました」

▽履正社・野口(5回1死二塁で5点目の中押し打)「なんとしても点を取るという全員の思いが勝因。後輩が投げているので、援護したかった。5回はインコースの真っすぐを逆方向に持っていきました」