<高校野球岩手大会:大船渡7-0盛岡農>◇17日◇2回戦◇きたぎんボールパーク
大船渡・佐々木怜希投手(3年)が「守護神」として今夏初戦を締めた。同校OBのロッテ佐々木朗希投手(21)を兄に持つ背番号1は、1回17球を投げ、1安打1四球無失点。自己最速を4キロ更新する143キロをマークするなど、力強い投球で7回コールド勝ちを呼び込んだ。
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謎の三角形に、私は「???」となった。
WBC開幕前日の今年3月7日、岩手・陸前高田市のホールには何枚もの巨大な旗に寄せ書きが集められていた。世界との戦いに挑む、地元出身の佐々木朗(以下、朗希)へのエールが寄せられていた。
その中の1枚には、母校大船渡の野球部員のメッセージが集められていた。「170キロ出してください」「世界一のエゴイストへ」といったエールが並ぶ。メディアにも露出するであろう旗に、三男怜希(以下、怜希)は何を書き入れたのだろう。気になった。
「ラムと留守番してます。by弟」
紫色のペンでつつましく書いていた。ラムとは愛犬のトイプードル。佐々木家は長男琉希さんが「り」、朗希が「ろ」、怜希が「れ」、愛犬ラムが「ら」、さらに金魚にルビーと名付け、見事に“らりるれろ”が完成している。
それはさておき、同じ字体でメッセージの左に謎の三角形が描かれている。明らかに怜希が書いたもの。サイン、コサイン、タンジェント。いつの時代も文系高校生が大いに苦しめられてきた「三角比」だ。
なぜこんなところに三角比? WBCへ挑む偉大な兄へ、なぜ三角比? 謎解きは好きだけれど、謎は募るばかり。結局正解が分からないまま、東北新幹線で帰京した。
周囲に見せても、誰も分からない。1日たって、ある人が正解を導き出した。言われるがままに視野を広くしたら、答えはすぐそばにあった。
旗に描かれた「14」は、朗希のWBCでの背番号。その「4」の中に、怜希が三角比を書き入れた縦長の三角形があった…要は、ただの落書きだった。
怜希は理系ではなく、文系だという。この発想の突飛さに驚かされた。視野が広い。遊び心がある。イニング間のマウンド上で相手チームの応援歌を口ずさんだりする朗希と、どこか通ずるものを感じた。
それもそのはず。朗希は高校時代から後輩の面倒見が良かった。感謝する後輩からの証言も多い。プロ入り後も「弟とよく連絡しています」と仲良しぶりを口にしていた。朗希が全国デビューした20年8月の高校日本代表壮行試合も、神宮球場で唐揚げとジュースをおともにネット裏で見つめていた。進化する姿を一番近くで見てきた。
一流の兄はプロ入りし、周囲の一流に触れ、さらに感性を磨く。遠く離れていても精神的にはずっとそばにいる弟も、当然のようにその感性に触れる。天才のDNA。暑い夏にいきなり自己最速を4キロ更新する理由も、分かる気がする。【19年高校野球担当、20~22年ロッテ担当 金子真仁】

