強豪校だけが、高校野球を担っているわけではない。全国各地で計3000試合以上が行われた地方大会取材の意義は、参加校の置かれた環境の違いを可視化してくれることだと思う。専用グラウンドを持ち、部員100人以上を抱える甲子園常連校は、ほんのひと握り。助っ人を借りて単独出場したり、4、5校による連合チームを結成したりする学校も珍しくない。顔ぶれは実に多種多様だ。

大会前に「離島の球児たち」をテーマに掲げ、都立八丈高校野球部を密着取材した。初めて会ったのは5月の大型連休中、都立日野での本州遠征だった。「島内に他の高校がないので、今回の遠征が同じ高校生と練習試合ができる唯一の機会です」。指導陣の言葉が、取材のきっかけだった。

試合序盤こそ攻守両面で実戦不足を露呈するミスが目立ったが、点差が離れても誰もへこたれない。「八高、ここからだぞ」「1点ずつ返すぞ」と声を絶やさず、終盤には連打で得点を奪うなど粘りを見せた。「課題を島に持ち帰り、改善していきます」。主将の長戸路哲星(ながとろ・てっせい)捕手(3年)が語る姿が頼もしく映った。

6月上旬に初めて八丈島を訪れ、警察官や消防士、土木作業員ら島内の野球経験者で作る「大人チーム」との練習試合を見た。少し歳の離れた“お兄さん”たちとの真剣勝負が、貴重な実戦機会となっていた。「環境を言い訳にせず、どこでも野球がうまくなれることを証明してほしい」と期待を寄せる島民の姿に胸を打たれた。

初戦敗退となった東東京大会2回戦の大森学園戦(大田スタジアム)にも足を運び、彼らの夏を見届けた。試合後には、本州から南へ287キロ離れた島へとフェリーで帰るナインを見送った。徐々に遠ざかる船のデッキから力いっぱい手を振る一行の姿を目に焼き付けた。

全国で行われた今夏の地方大会には3662校、3363チームが出場した。甲子園行きを勝ち取った代表49校だけではなく、敗れ去った学校にも無数のドラマがある。甲子園が終わった時、ゆっくりと思い返したい。あの心地よい島風を浴び、伸び伸びと野球に打ち込む八丈ナインの姿を。【平山連】