阪神、楽天、巨人でプレーした中谷仁監督(47)が率いる智弁和歌山が、健大高崎(群馬)を下して5年ぶり4度目の日本一をつかんだ。1点リードの8回表に2ランを浴びて逆転されたがその裏、勝負勘全開でスクイズを成功させるなど再逆転。15年間のプロ野球生活で培った準備野球で2度目の頂点をつかんだ中谷監督は、「智弁ファミリーの優勝」と胸を張った。
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智弁和歌山の中谷監督は、感情を爆発させて喜ぶナインに目を潤ませた。第一声は「感無量です!」。満員札止めの甲子園でつかんだ5年ぶり4度目の日本一。前回21年の優勝はコロナ禍で無観客。その後出場した3大会はすべて初戦敗退。うれしさは格別だった。
「県大会から本当に苦しい試合の連続。『こういうゲームは、僕たちのゲームのペースなんだ、展開なんだ』と。『日本一になるには、これぐらい当たり前やからこっからやぞ』と。大丈夫だと信じていました」
逆転されてもどっしり構えた。2-1で迎えた8回表、エース和気がまさかの2ランを浴びてひっくり返された。それでも動じず、魔曲「ジョックロック」の後押しを受けてその裏死球、安打、犠打で1死二、三塁を作った。ここで7番川原にスクイズを指令。初球はファウルで失敗したが、次の1球を見て、「マークしていないな」と元プロの直感を発動。3球目で再び仕掛け、投前に転がす成功で同点にした。その後暴投も誘い、一気に逆転した。
6年間で2度の日本一は準備野球の集大成だった。ベースは「野村野球」。15年間の現役プロ生活の中で7年間、阪神と楽天時代に野村克也監督に野球を学んだ。「ノムラの考え」の軸となる「準備の大切さ」を選手に伝えてきた。「データを取ることは、次の試合や相手に対しての準備を行うということ」。準決勝の横浜(神奈川)戦では、5番楠本が最速157キロ右腕の織田撃ちの決勝3ランを決めた。「カウント2-0からは100%真っすぐ」。対戦相手に応じた徹底分析をナインに浸透させ、強いチームをつくった。
試合では厳しい表情が多いが、家に帰れば12歳の娘と2歳の息子を育てるイクメンになる。妻で寮母の千保子さんは「めっちゃくちゃ子育てします」とほほ笑む。中谷監督は忙しい千保子さんに代わって子どもたちの世話も担当しながら、早朝から寮生の食事作りも手伝っている。「(妻が)握ったおにぎりをラップで握るぐらいですけどね。僕が握ったら無茶苦茶ひどい形になるので」(笑い)。
2人の会話の「9割は野球のこと」だという。寮生の健康状態や心のケアで毎日の意見交換を欠かさない。「ずっと一緒に生活しているので自分の子どものような感覚です。智弁ファミリーの優勝ですね」。ナインを愛し、家族も愛してつかんだ監督2度目の日本一。みんなを愛おしそうに見つめるその目はどこまでも優しかった。【佐藤妙月】
∇智弁和歌山・山田(8回スクイズの場面で三塁走者として本塁生還)「どこでもいいから転がしてくれと。同点になった瞬間は心臓が飛び出るぐらいうれしかった。監督に最高の恩返しができました。(今後は)4年間大学でやって、ドラフト1位でプロに行けるようにやりたい」
∇智弁和歌山・久葉(8回2死二塁のピンチから登板し、優勝投手に)「今までとは違う多少の緊張感はありました。いつもとやることを変えずにやった結果が0点につながった。(勝利投手の)喜びより、チームメートに感謝したい気持ちが強いです」

