MLBの開幕延期が続く中、米国では野球に飢えた人々が無観客ですでに開幕した台湾や5月5日に開幕が決まった韓国プロ野球に注目している。ツイッターを見ると、インターネットで台湾の試合ライブ配信を視聴している米国の野球記者も多い。今季から台湾プロ野球に参入した楽天は試合をネット配信しているが、4月15日の開幕初戦は全世界で65万人が視聴したという。台湾の他球団も、英語実況のネット配信を強化する流れになってきた。

韓国プロ野球は、米スポーツテレビネットワークESPNから米国内での放送契約のオファーがきた。当初、ESPN側は放送権を無料で獲得しようとし、難色を示す韓国側との契約交渉は簡単には進まなかった。だが27日の韓国聯合ニュースによると、ESPNが米国内の放送権を得ることでほぼ合意した模様で、MLBが開幕するまでの間、韓国プロ野球がESPNの全米放送で中継されることになりそうだ。

台湾、韓国にはそれぞれ最近までMLBでプレーしていた選手や元メジャーリーガーの指導者も多く、米メディアがそうした選手の特集やインタビュー記事を掲載することも増えている。ジャイアンツなどメジャーで4年間プレーし昨季から韓国LGに所属する先発右腕ケーシー・ケリー(30)は、米メディアの電話インタビューで「間もなく開幕すると思うと本当に楽しみ」とテンションを上げていた。昨季は14勝12敗、防御率2.55と好成績を残しており、今季も引き続き活躍すれば来季はメジャー復帰も視野に入れているそうで、米国で試合が放送されることはモチベーションアップにもつながる。

新型コロナ禍から野球がどのように復活していくかという観点から、台湾、韓国の野球を注目している関係者もいる。韓国では、選手は球場外ではマスクを着用し、球場入り口では体温測定器を通過することを義務付け、球団によっては選手のダイニングルームのテーブルに仕切りを設置し、それぞれ隔離しながら食事がとれるようにしているところもあるという。唾はきや指なめを禁止するルールも作られている。4月20日付のニューヨーク・ポスト電子版は、米国は新型コロナウイルス感染拡大の規模がはるかに大きく、単純には比較できないとした上で「選手をどう守るか、クラブハウスで選手をどう過ごさせるかといった舞台裏の状況は、MLB関係者も注目しているところ」と指摘。MLBはまだ開幕のめどが立たないが、他国のシーズン開幕は米国にも希望を与える出来事になっている。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)