ドジャース前田健太投手(30)に6日(日本時間7日)、第2子となる長男が誕生した。出産に立ち会い、その後にエンゼルス戦に登板。歯を食いしばり、全力で投げた86球は勝利には恵まれなかったが「生まれた日に投げるというのは、今後、一生ないと思う」と感慨に浸った。

 おめでたい日。大いに喜んでいい日。それでも、真剣に故郷を心配し、真摯(しんし)に語る姿が印象的だった。西日本を中心に豪雨が襲った豪雨は深刻な状況だ。被害が広がる中、前田はこう切り出した。「選手たちが悩む問題なんですけど、東日本大震災が起こったときも、僕たちはプレーしていていいのか、そういう議論になる」。

 カープに在籍していた14年にも広島で土砂災害が起きた。前田は被害が起きてから初めての登板で、139球の熱投で完封した。前回登板、6日(日本時間7日)のエンゼルス戦では6回途中1失点だったが、ボールを投げる瞬間、力を振り絞る声がスタンドまで聞こえてくるくらい、思い切り腕を振っていた。

 「試合がある限り、応援してくれる人たちのために、一生懸命プレーするしかない。中途半端な気持ちでプレーするんじゃなくて、とにかく与えられた場所で一生懸命、ファンの人たちに喜んでもらえるようなプレーができればいい」

 迷わずに、全力で投げる。これが前田の出した結論だ。活躍の場は現在、約9500キロ離れた米国で、奮闘する姿を直接ファンに見せることは難しいが、出来ることはある。自身のインスタグラムで8日(同9日)、改めてメッセージを送った。「豪雨の被害がこれ以上広がりませんように。そして、被害に遭われた方たちが早く元の生活に戻れますように。アメリカから祈ってます」。遠く離れていても、常に全力な前田の一生懸命さは、きっと届くはずだ。【MLB担当 斎藤庸裕】