エンゼルス大谷翔平投手(26)が、右肘、左膝の手術を乗り越え紅白戦のマウンドに立った。故障発覚からの道のりを振り返る。

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露骨に怒りをあらわにした降板から、2年1カ月がたった。18年6月6日のロイヤルズ戦。4回4安打1失点で交代を告げられた。翌日、右肘の靱帯(じんたい)損傷が発覚。投げられない自分に対する憤りは、隠そうとしても抑えられなかった。「基本的に失敗に余計なものはない」と考え、経験を糧とする。だがこの時ばかりは違った。当時を「落ち込んだ」と振り返り、ケガで離脱した期間を「無駄な時間」と言った。

待ちに待った実戦マウンド。「(打者で)試合には出ていたので、長いとは思わなかった」と言ったが、投球内容は理想に遠かった。右打者の外に逃げる球ばかりが目立った。それでも、試合レベルで腕を振ることに「怖さはなかった」。本音は違ったとしても、弱音は吐かない。

トミー・ジョン手術からの二刀流復活。前例がない。こうあるべきという答えもない。大谷自身、座右の銘を持たず、物事を「偏りなく」捉える。プライベートで読書に時間を費やすのは「いろんな本を読んだ方が自分で(方向性を)決めるのもうまくなる」と考えるから。やってみてダメなら捨てる。良ければ取り入れる。自分を信じ、柔軟に取捨選択をしてきたから今の二刀流がある。

ぶぜんとマウンドを降りてから762日。大谷は、大谷らしい笑顔でベンチに戻ってきた。