日本一打線斬りで、広島黒田博樹投手(40)がオープン戦最終登板を終えた。強力ソフトバンク打線を相手に7回6安打無失点。7回には1死満塁のピンチを背負ったが、最後は松田を必殺球ツーシームで三ゴロ併殺に打ち取った。チームはオープン戦最下位に沈んだが、3勝はいずれも黒田登板日と、まさしく頼れる存在だ。シーズンでの登板が見込まれる29日ヤクルト戦(マツダスタジアム)が、待ち切れない!

 黒田のツーシームは、バットに当たる寸前で食い込んだ。7回1死満塁。ピンチで松田を迎えた。スコアボードはゼロ行進。オープン戦とはいえ失点は許されない。カウント1-1からの3球目。内角高めに投じた必殺球がはまった。ベンチへと歩きながら三ゴロ併殺が完成するのを見守った。グラブをたたく。本番さながらの集中力だった。

 「内角へのツーシーム。狙い通りでした。ただあの回は簡単に安打を打たれてしまった。反省点です」

 4イニングで先頭打者を出し、ボールが高めに浮く場面も見られた。絶好調ではない。だがそれでいて圧倒的な投球だった。さらに7回を92球にまとめ「シーズンに入れば展開によってはもう1、2イニングいけるんじゃないかな」と頼もしい言葉を残した。調子うんぬんではない。もはや別次元にいるといっていい。

 マウンドに上がってから、黒田の戦いは始まる。信頼するツーシームを軸に、体の状態、打者の反応などさまざまな要素をジャッジし、組み立てる。「いつものようにいい球も悪い球もあったけど、悪い球もうまく使いながら投げられた」。メジャーで5年連続2桁勝利の実績を持つ洗練された計算と技術。昨年の日本一打線を相手に、ゼロを並べていった。

 前日21日に「常に何かに追われているような。そんな感じです。手応え? まったくないですね。投げるのに必死」と表現した気持ちは、7回を無失点に抑えても変わることはない。それどころか、あらためて「やり残したことはたくさんある。いつまでたってもある」と言う。常に上を目指す男は常に不安に駆られている。それを解消することをエネルギーとしてきた。

 広島ではオープン戦過去最多となる3万1255人に見守られた。10年3月21日の阪神戦で記録した2万3534人を大きく上回る「全席完売」。黒田が登板したオープン戦3試合だけ、チームに白星が訪れた。ファンの期待にも、首脳陣の期待にも応える。緒方監督が口にした「彼なくして今年の戦いはない」の言葉がすべてだろう。【池本泰尚】