9回に突き放されて敗れたが、29個目の盗塁は、緊迫した駆け引きの末に奪った。ヤクルト山田哲人内野手(23)が7回2死一塁、広島黒田とのせめぎ合いを制した。1秒11のクイックをかいくぐり、塁間を2秒99で駆け抜けた。トリプルスリーに近づく盗塁。得点にはつながらなかったが、相手の警戒の上をいく技術を見せた。
先頭打者で塁に出て、2死まで待って走るまでに10回のけん制を受けた。リードを取る途中でのけん制や、4球連続、極端に長く持つなど、黒田も手を替え品を替え、一塁に張り付けようとしてきた。山田は通常大股4歩で取るリードを小さめの5歩で取った。「塁に出た時の相手の感覚を大事にしています。それでリードの大きさを決めます」。いつも以上に慎重にリードを取る姿は、黒田が走りにくい相手だったことをうかがわせた。
リードの際に右手をひざにつけるのは、三木作戦コーチのアドバイスがあったからだ。「足だけでなく、手の反動も使うと、帰塁やスタートを行いやすい。オレはそうしてた」。奥深い盗塁の技術を聞いた。山田の好奇心はかき立てられ、技術が向上していった。
もともと、好奇心旺盛なタイプだ。昨年まで住んでいたヤクルト戸田寮の3階の部屋は幽霊が出るといわれていた。霊感のない山田ですら、金縛りに遭うことが日常茶飯事だった。「僕、絶対見てやろうって思って毎回、目を開けるんです。何も見えないんですけどね」。その性格が生きている。飽くなき探求心を持って戦う山田。ついにトリプルスリー圏内まで、あと1盗塁だ。【竹内智信】



