戦い続ける男のバットが頼もしい。阪神福留孝介外野手(38)が右中指痛を抱えながらも3安打と気を吐いた。今季11度目、4番では初めての猛打賞をマーク。7回は右翼守備で追加点を防ぐファインプレー。勝負の9月に存在感を発揮する背番号8に、明日からの巨人戦も期待しよう。

 福留は球場内の薄暗い駐車場で歩くスピードを速めた。孤軍奮闘だった。それでも残ったのは完封負けの悔しい結果。帰りのバスまで険しい表情が崩れない。喜ぶことのできない猛打賞だった。

 「負けたら何も意味がない」

 4番として、チームの先頭で意地を見せた。初回1死一、二塁。絶好の先制機に奮い立った。中日若松の真ん中に入った失投を、思い切り引っ張る。二遊間を破る右前打で満塁とし、8月月間MVPの右腕にプレッシャーをかけた。6回にも若松から2本目の中前打。2点を追う8回2死一塁では、2番手浅尾にバットを折られながら中前に転がした。執念で5試合ぶりの猛打賞を完成させた。

 前日5日には6回にファウルした際、右手を痛がるしぐさを見せた。和田監督は「あれは一瞬のことなんで、時間がたつとまた戻るんで」と話したが、無理をしながら試合に臨んでいるのは明らかだ。一夜明けての試合前練習では、首脳陣が打撃投手に「チェンジアップを交ぜてくれ」と依頼。関川打撃コーチは「これで結果が出るかは分からないけれど、無抵抗よりやる方がいい」と説明し、チーム全体で若松が得意とする緩急対策に乗り出した。

 福留が若松から放った2本の安打は、いずれも120キロ台の変化球。手負いの38歳が教科書役となり、連続安打を8試合に伸ばした。スタメンに戻ってからの12試合で打率は4割9厘。4番に入ってからの4試合で13打数6安打、打率4割6分2厘を誇る。右翼守備でも2点ビハインドの7回2死満塁、大島の前方への飛球を地面すれすれでキャッチ。抜群の感性と無駄のない動きでダメ押しを防いだ。投打ともに安定する38歳の力なくして、今のチームはない。

 「どの試合も大事だから」

 明日8日からは福留が今季、打率3割と打ち込んでいる巨人を甲子園で迎え撃つ。今季を占う3連戦だが、あえて過度な意識は避けた。中日ではリーグ制覇を3度経験。やるべきことは分かっている。【松本航】