逆転4連覇に向け、巨人原辰徳監督(57)がリミッターを解除した。首位ヤクルトとの2連戦初戦で、打線の組み替えを断行。約3カ月間も1番で固定した絶好調の立岡を2番にし、本調子でない長野を約2カ月半ぶりに1番で起用。シーズン終盤の打順変更はリスクも高いが、相手との相性、状態、すべてを考慮した上での決断が奏功した。セオリーにとらわれずに最善策をチョイスする「原哲学」で、眠っていた巨人打線が覚醒。首位ヤクルトに1ゲーム差と肉薄した。

 引き締まった表情のまま、原監督がベンチを飛び出した。勝利に沸くナインに目を細めながら、喜びを内に秘めてハイタッチの列に加わった。リーグ4連覇の命運が懸かる7連戦の初戦に完勝。「非常に大きい」とシンプルに喜んだ。

 3位で迎えた、残り13試合目。原監督が勝負手を打った。本調子でない長野を7月4日以来の1番に配し、6月からほぼ1番の立岡を2番で起用。意外なスタメン発表に神宮はざわついたが、揺るぎない信念が、原監督の根底にあった。

 原監督 時に、セオリーというのが自軍を苦しめる時がある。作戦には、リターンがあればリスクがある。我々はリターンというものを考えて勝負している。

 やみくもな手ではない。16日の広島からの移動日、わざわざ長野の名前を挙げた。「打席で『さあ、やってやるぞ』という感じがない。威風堂々と」とレスリングの世界選手権女子53キロ級で13連覇、個人戦200連勝を達成して涙した吉田沙保里(32=ALSOK)を例に、奮起を促した。

 思いを知った長野の集中力はグンと上がった。翌日の練習では鋭いスイングと動きが復活。狙い通り、戦闘モードに入った。加えて小川には今季3割5分7厘。状態と相性。ラストスパートに不可欠な「背番号7」の復活にはベストと判断し、打順を動かした。意気に感じた長野はダメ押し適時打を放ち、立岡は決勝打だ。

 原監督の哲学は、各所にちりばめられていた。「俺が相手の監督なら嫌だなと思うかとかも考える」。対小川の今季打率3割のアンダーソンと3割5分7厘の亀井をスタメンで起用。アンダーソンは先制ソロ、亀井は安打とはまった。

 シーズンも第4コーナーを回ったところでの打順変更は“ギャンブル”と取られるかもしれない。原監督は「調子や相性。あまりこだわらずに」と話したが、確固たる裏付けがあったのだ。「野球ってのは面白い。本当に深い。打って投げて走って、それだけでもいいんだけど、それだけじゃないんだ」と思い切りタクトを振った。革新なくして進歩なし。世間の常識は、原監督の非常識でもある。デッド・オア・アライブの最終局面。攻めの姿勢で、首位の背中を捉えた。【浜本卓也】