ヤクルトが混セから1歩抜け出した。戦列復帰2戦目のウラディミール・バレンティン外野手(31)が、3安打2打点の活躍をみせた。5月に左太もも肉離れの手術を受けたが、2回には二塁からホームへ全力疾走。3、7回には適時打もマークするなど、代名詞の1発はなくとも「フォア・ザ・チーム」で勝利に導いた。3位巨人を再び2ゲーム差に突き放し、今日20日からは甲子園で2位阪神と2連戦。早ければ今日20日にも、14年ぶりの優勝マジックが点灯する。

 バレンティンが、全力疾走した。1点リードの7回無死二塁。巨人宮国のカットボールを振り抜き、大きなストライドで一塁を駆け抜けた。懸命にダッシュして二塁へ到達。右翼線へ、ダメ押しとなる適時二塁打だ。代走を告げられ、一塁側ベンチに退いた主役に、燕党から惜しみない拍手が送られた。「チームは首位。自分にできることをしたかった」と必死だった。

 とにかく走った。1点を追う2回。1死走者なしから、左翼線への二塁打でチャンスメーク。続く雄平の中前打で一気にホームへ。三塁を回ってもスピードを緩めるどころか、さらに加速。体重100キロ超の巨体を前後左右に揺らした。中堅・長野からの好返球にも「すぐにでも点がほしい場面。点に何とか絡みたかった」と左手を伸ばし、捕手のタッチをかわして巧みに生還した。

 昨季までの姿は、そこにはない。凡退すれば、ゆっくりと一塁へ向かい、長打コースの当たりにもダッシュはしなかった。故障で意識が変わった。今季初出場だった4月24日の巨人戦(神宮)で左太ももの肉離れ。米国で手術を行い、孤独なリハビリ中に思った。「四球でも死球でも何でもいい。そういうチームプレーで勝利に貢献できたら」。ユニホームを泥だらけにして走る、純粋な野球少年の心を取り戻した。

 復帰2戦目で不安視された走塁面や、実戦不足の課題は感じさせなかった。3回には左前に適時打をマーク。雄平の逆転3ランを呼び込むなど、打線の勢いをよみがえらせた。

 見据える先がある。チームは負けられない試合を制し、2位阪神に2ゲーム差をつけた。14年ぶりのVも現実味を帯びてきた。さらにバレンティンは10月14日から始まるクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージで暴れたい理由がある。「ちょうど(10月)17日は娘の誕生日なんだ。娘の前でかっこいい姿を見せたいんだ」。愛娘ミアちゃんの4歳の誕生日を最高の形で祝福するためにも、負けられない。

 試合後、今季初のお立ち台に呼ばれ「タダイマ」と日本語でファンにあいさつした。「これからも、200%の力で優勝に向けてやっていきたい」と誓った。1発はなくとも、チームのために全力プレーを怠らないバレンティンが帰ってきた。「みんなが感じていたプレッシャーを軽減できればいい」。真っ白なユニホームとはおさらばだ。【栗田尚樹】

 ▼首位ヤクルトと2位阪神の差が2ゲームに開いた。セ・リーグで首位と2位が2ゲーム差は8月29日(首位阪神、2位ヤクルト)以来で、ヤクルトは今日にもマジック9が点灯する。M点灯の条件は、ヤクルトが阪神戦○、巨人が中日戦●、広島がDeNA戦●。ヤクルトの連敗は8月20日DeNA戦、21日中日戦が最後で、その後は19試合連敗がない。9月は7勝3敗1分けの勝率7割となり、セ・リーグで唯一9月に連敗していないヤクルトがM点灯に近づいた。