ヤクルト山田哲人内野手(23)が、巨人との決戦前に2打席連続アーチで勢いをつけた。DeNA25回戦の1回表1死一塁から左翼席へ先制の35号2ラン、1点差に迫られた3回にも36号ソロを放った。チームは3年ぶりのクライマックスシリーズ(CS)出場が確定。2位巨人も勝ったためマジック点灯はお預けも、歓喜の瞬間へ大きく前進した。明日26日からは敵地・東京ドームで勝負の2連戦。山田が、好調のバットで勝利をもたらす。

 山田の勢いは、誰にも止められない。初回1死一塁。初球からいった。見逃せばボールの内角高め143キロ直球。腕をコンパクトにたたんだ。「詰まっていたし、どうかなと思ったけど」。技ありの先制弾で、リズムに乗った。2-1の3回先頭。今度は、やや外寄りのチェンジアップを引きつけた。「変化球が来るんだろうなと思って。うまく対応できました」。またもや、左翼スタンドへ放物線を描いた。

 絶好調の波に乗る。明日26日から大一番を戦う巨人は、セ・リーグで最も苦手とする。対戦成績は打率2割2厘、2本塁打と、山田らしからぬ数字だ。「何だか嫌なんですよ。昔、巨人ファンだというのもあるのか分からないですけど。何か打てなくなるんですよ」と漏らしたこともある。心のもやもやを抱える中、宿敵へ向けたアピール弾で景気づけてみせた。

 勝負を前に、先制パンチは打ち込んである。18日の巨人戦(神宮)前のシーン。試合前の練習を終えて、クラブハウスへ向かう時だった。熱狂的なG党の前を通り過ぎた瞬間に「山田~! 頼むから巨人に来てくれ! お前がいないと駄目や!」と言われた。山田は「恥ずかしいです」。苦笑いを浮かべて下を向くだけだったが、23歳の力に巨人ファンも脅威を感じている。

 最後は、強い気持ちで勝利のバットを振る。「本当に気持ちだけ。内容よりも、結果が全て。結果だけだと思います」と何度も「結果」の2文字を繰り返した。真中監督も「3連覇中の巨人をたたかないと、優勝はない」と、気持ちを高ぶらせている。

 3年ぶりのCS進出は、あくまで通過点に過ぎない。残り7試合。山田は、口癖のように言う。「あくまで僕たちはチャレンジャー。1試合1試合やるべきことをやるだけ。僕は3番を任されている。僕が打たないと意味がない」。過去の成績や相性など関係ない。山田のバットで、王者巨人に引導を渡す。【栗田尚樹】

 ▼山田が35、36号と2打席連発。1試合2本塁打以上は今季5度目で、すべて神宮球場で記録。神宮球場では今季23本目となり、13年バレンティン38本、99年ペタジーニ25本に次いで3番目、日本人選手では04年岩村の22本を抜いて最も多い。山田は全試合二塁手で出場。二塁をシーズンの半分以上守った選手では04年ラロッカ(広島)が40本打っているが、日本人の二塁手でシーズン36本は97年小久保(ダイエー)に並ぶ最多本数となった。これで2位畠山(ヤクルト)とは10本差に開き、山田がセ・リーグ初となる二塁手の本塁打王になりそうだ。