わずか数分のうちに、戦いの舞台が神宮球場から甲子園に変わった。東京6大学リーグで131安打を放ち最多安打記録を更新する明大・高山俊外野手(4年=日大三)が阪神から指名を受けた。前日までにヤクルトが1位指名を公言。頭の中は神宮球場一色だったが、阪神と競合し確認ミスの末、日大三で11年夏に全国制覇した甲子園を主戦場とすることになった。連続試合フルイニング出場などの記録を持つ金本知憲新監督(47)のもと「息の長い選手になる」と誓った。

 予想外の事態に、テレビ中継を見守っていた高山は目を見開いて驚いた。交渉権を獲得したと思われたヤクルト真中監督からエールを送られたわずか数分後、今度は金本新監督に「一緒に頑張ろう!」と言われた。「やっぱり、何が起こるか分からないドラフト会議。本当に自分もよく分からない感じです」と、阪神が交渉権を獲得した直後は状況をのみ込むのがやっとだった。

 明大・善波達也監督(53)から異例の“2度目の握手”を求められるとやっと表情を和らげ、息を吐いた。「競合していただいたのはびっくりしましたが、うれしい結果になりました。金本さんのように長く野球人生を歩めるような選手になりたいです」と、長く虎ファンを魅了し続けたアニキを早速目標に掲げた。

 ドラフト指名から約3時間後、東京・府中市にある明大の寮で、駆け付けた金本新監督と初対面を果たした。「すごいオーラを感じました。感動しましたし、タイガースの一員としてやっていく気持ちが強くなりました」と目を輝かせた。技術面に関してもアドバイスを受け「強いスイングをして遠くに飛ばせと言われました。スイングスピードには自信があります」と言った。

 日大三では3度甲子園に出場。11年夏に日本一になった際は、50メートル5秒8の俊足を生かして大暴れし、準決勝、決勝では2本塁打を放った。神宮球場で目下、東京6大学リーグの最多安打記録を更新する神宮のスターは甲子園の申し子でもある。「あんなにいいグラウンドで今からやれると思うとワクワクします」と思いを巡らせた。

 中学時代の通知表はオール5に近かった。切り替えが早く負けず嫌い。分からないことについてはとことん追求する。「バッティングで監督の期待にこたえたいです」。高山の頭には金本新監督のゲキにこたえ、虎ファンに囲まれる姿が描かれていた。【和田美保】

 ◆当たりの勘違い 最近では3年ぶりに抽選が復活した05年高校生ドラフトで混乱が相次いだ。巨人、オリックスの2球団競合となった辻内崇伸投手(大阪桐蔭)の抽選で、オリックス中村GMがNPB印を当たりと間違え「当たった」とくじを掲げた。ガッツポーズを見た巨人堀内監督は「交渉権確定」のくじを持ちながらも「初めてのことだからよく分からない」と苦笑い。結局、辻内の会見後に確定球団が訂正された。陽仲寿内野手(福岡第一=現陽岱鋼)のくじは日本ハム・ヒルマン監督、ソフトバンク王監督が引き、ヒルマン監督が右手を掲げた。ところが王監督が「当たりはこちら」とばかりにくじを掲げて抗議し、確定球団は日本ハム-ソフトバンク-日本ハムと再訂正。意中のソフトバンクに当たったと思い込み感激の涙を流した陽は、日本ハムに決まると言葉を失った。