長男にささげる1勝だ。ヤクルト成瀬善久投手(30)が阪神戦に先発して6回を2安打1失点と好投し、開幕5戦目でチームに今季初勝利をもたらした。新球ワンシームを駆使してソロ1失点に抑え、猛虎打線を翻弄(ほんろう)。FA移籍から2年連続、本拠地阪神戦で1勝目を挙げた。試合後には昨年8月に待望の第1子となる長男が誕生していたことを明かした。
チームにとっても成瀬にとっても、大きな大きな白星になった。昨季リーグ王者が、12球団唯一の開幕4連敗。負の連鎖を最初の4球で断ち切った。1回、阪神高山を徹底した外角スライダーで攻めた。2球空振り。1ボールを挟み、最後は泳がせて遊ゴロに。「今日はまず1アウト。先頭で取れたことが大きかった」。1年前の悪夢をぬぐい去り、リズムに乗った。
FA移籍1年目の昨季、本拠地開幕戦の先発を任された。同じ阪神戦。2連打後、3番西岡に3ランを浴びた。5回3失点で勝ちは付いた。でも「1死も取れずに3点取られた」苦い記憶は、脳裏にこびりついて離れなかった。あの日から一転。3回まで得点圏に走者を進めず「自分らしい投球ができたかな」。芯をはずし、凡打を築いた。
粘投が援護を呼び、チームは今季5試合目でやっと勝った。トンネルを抜けた真中監督は「ここまで長かったね…。まだ1試合だけど」と安堵(あんど)。「ナイスピッチング」とたたえた。秘密兵器は新球だった。不利なカウントで、以前は直球の一択だった。それがワンシームは、カウント球にも勝負球にもなる。2回西岡の二ゴロと、5回梅野の遊飛は「理想的」に沈んだ。1つの変化球で、気持ちがラクになった。
試合後の囲み取材が終わると、成瀬は自分から「もう1つ…」と切り出した。「遅くなりましたが、8月4日に長男が生まれました。ウイニングボールをあげたいと思います」。昨夏2軍で苦しんでいるタイミングでの誕生だった。待ちこがれた、生まれてから初の1軍勝利。同じ神宮、阪神戦での1勝目でも、1年前とは充実度が全然違う。昨季は3勝だった。「去年は力になれなかった。去年以上は当たり前。ローテを守って恩返ししたい」。これ以上ない、シーズンの好スタートを切った。【鎌田良美】



