涙、涙の日本一だ。明大(東京6大学)が、初出場の桜美林大(関東5連盟第1)に5-2で逆転勝ちし5年ぶりの優勝を決めた。6度目の制覇は単独最多となる。ドラフトでヤクルトから2位指名された星知弥投手(4年=宇都宮工)が、中日1位の柳裕也投手(4年=横浜)からバトンを受けてロングリリーフ。5回無失点の好投で逆転を呼び込むと、8回には初本塁打まで放ち涙で有終の美を飾った。

 22歳の男たちが、グラウンドで大粒の涙を流した。立てないほど泣きじゃくる主将の柳を見て、星は涙が止まらなくなった。「柳は最高のキャプテン。柳を日本一にしたいという気持ちで投げた。大学生活の最後がいい結果で終われて本当に良かった」。1、2年生の時は決勝で敗れ、秋の日本一を逃した。最後に、最高の結末が待っていた。

 明大らしい底力を見せた。0-2の5回、柳からマウンドを託された。リーグ戦でフル回転したエースの状態がいまひとつなのは、分かっていた。「柳と一緒にやってきて今の自分がある」。星は、最速150キロを超す直球とツーシームを武器に無失点で流れを引き寄せた。その裏に味方が桜美林大・佐々木千を攻略した。4点を奪って逆転。8回には「人生で初めて」(星)の本塁打まで放った。

 開花した。星は中学の時、元巨人の桑田真澄氏(48)とキャッチボールをし、「この子はすごい」とうならせた伝説を持つ。150キロ超え右腕として明大に進学したが、変化球をものにできず伸び悩んだ。ラストイヤーが転機だった。「置きに行ってボールになるなら腕を振ってボールの方がいい」。あれこれ考えるのをやめた。4年春に初勝利を挙げ、この日、日本一の胴上げ投手になった。

 今大会は3試合すべてで救援し9回1/3を無失点。善波達也監督(54)は「星の成長は大きかった。柳と星の涙を見て私も感動した。ありがとうという気持ちです」と両右腕をたたえた。星は「苦しい部分、つらい部分もあったが、充実した4年間でした。柳とはこれからもいいライバルでいたい」と言った。ヤクルト、そして神宮の星として、さらに輝きを増す。【和田美保】