西武秋山翔吾外野手(30)は気楽だった。「ノーアウトで金子がポンと打ってくれて、すごく勢いがついた」と後輩を立てた。2回、金子侑の逆転の2点適時打と敵失で3点を奪い、なお無死一、三塁で回ってきた。広島薮田から右中間へ8号3ラン。攻撃は止まらない。打者14人で8安打10得点。10者連続得点は、10年ぶりの球団タイ記録だ。

 秋山は「10点中の3点でしょ。かすむよ」と冗談めかしたが、勝負の流れを決定づけた。何より、前夜のショックを振り払う1発だった。前日は、10回表に自らの3点適時三塁打で勝ち越したが、その裏に、まさかの4失点で逆転サヨナラ負け。雨による中断を含むと、5時間を超える熱戦の末、敗れた。「昨日は、個人的にはヒットが出てホッとしたけど、悔しい思いをした人間はたくさんいる」。勝つしかなかった。

 前日の敗戦後、辻監督は「不信感が怖い」と警戒した。野手が打っても、投手が打たれて負ける。不協和音が生まれかねない。もっとも、秋山には杞憂(きゆう)だった。「5月前半は野手が打てず、投手に助けてもらった」。助け合ってこそ。芯は揺るがない。

 チームを思う気持ちが冷静にさせる。この日で587試合連続出場。阪神鳥谷の記録が止まり、継続中の選手ではトップに立った。鳥谷の1939試合に「想像を絶する。僕が届く時は40歳」とため息。ただ、最後は「それはチームにとって良いことなのかな?」と自問自答で終わった。中堅となり、若手の突き上げを受け止める気概もある。

 5月は10勝14敗と負け越したが、最後のカードは勝ち越し。マツダスタジアムでの連敗も9で止まった。「勝って次の月に行ける。良かった」。切り込み隊長の言葉は、全員の気持ちを表していた。【古川真弥】