日本ハム渡辺諒内野手(24)がチームを救った。10日、西武7回戦(札幌ドーム)の6回に決勝の逆転3号2ランを放った。試合中盤で点の取り合いとなった乱打戦にケリをつける1発も含め、今季初の猛打賞となる3安打2打点で西武のエース多和田をKO。正二塁手に最も近い13年ドラフト1位の大活躍でチームは連敗を阻止し、再び貯金を1とした。

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心を整理して、渡辺が思い切りバットを振り切った。「入ってくれと思って、走っていました」。3点リードを逆転された直後の6回無死一塁。西武多和田の初球。「甘いところに来た」146キロ直球をとらえると、打球は左中間スタンドへ届いた。決勝の逆転3号2ラン。「逆転された直後に逆転できてよかったです」。11日ぶりに先発したエース上沢を、そしてチームを救った。

まさか、自分がヒーローになるとは思っていなかったようだ。「バントかなと思っていた」。1点ビハインドの場面。まずは同点に追いつくことをイメージし、つなぎ役を全うする覚悟だった。ただ、サインは違った。栗山監督は「迷わなかった」と「打て」のサインを出した。「何としても打ちたかった」と奮い立った渡辺が、指揮官の大きな期待に最高の放物線で応えた。

正二塁手に一番近い男。今季限りで現役引退する田中賢に対して「恩返しのためにもレギュラーに定着して、優勝して送り出したい」という思いがある。試合中も打撃や守備などのアドバイスを受けることがあるという。昨季後半戦から二塁で積極起用され、経験を積んで臨んだ今季は、大先輩の後継者として足場を固めないといけないシーズン。「まだ、オレがやった方がいいと思われないように」と強い覚悟もある。

春季キャンプ中に右脇腹を肉離れし、開幕は出遅れたが、パンチ力のある打撃で欠かせない戦力へ成長中だ。栗山監督も「絶対に結果を残してくれると思った。ナベは、そういうものを持っている選手」と、かける期待も大きい。渡辺は「去年、あれだけ出させてもらってますからね」。先行投資してもらった経験値をムダにはしない。13年ドラフト1位は、ここから主力へ一気に駆け上がっていく。【木下大輔】