キャプテン決めた! 矢野阪神が今季4度目のサヨナラ勝ちで3連勝を飾った。手に汗握る0-0で迎えた9回1死満塁。糸原健斗内野手(26)が右翼に快音を響かせた。今季2度目の途中出場だったが、主将がここ一番で大仕事。甲子園でコイに3連敗した借りをツバメで返し、首位広島に2・5差で食らいつく。

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ずぶぬれで、糸原は矢野監督と抱き合った。試合を決めた男が、熱い抱擁。ナインに追われ、歓喜のウオーターシャワーを浴びた終着点は指揮官の胸だった。

「最高です! 前の北條がつないでくれたので、絶対に決めてやるという気持ちで打ちました」

チャンスを逃すことなく、一振りで決めた。0-0の9回1死満塁。ファウル、ファウルで粘った5球目。真ん中低めにきた146キロ直球を捉えた。打球は右中間を抜ける。勝負あり。「食らいついて、最高の結果になりました」。一塁ベースを目掛けて走る糸原が右拳を突き上げた。今季4度目のサヨナラ劇場で、甲子園の幕を下ろした。

途中出場でも「その瞬間」のために備えた。今季2度目のベンチスタート。6回の代打から試合に入った。「もちろん、悔しさはある。試合に出たらチームのために仕事をしたい」。ここ一番で主将が意地を見せ、勝負を決めた。

仕事をもらえる有りがたさ、応援してもらえる有りがたみを知っている。社会人JX-ENEOS時代には、中心選手であったにもかかわらず、自ら観客を集めたこともある。「そういえば、ポスター張りもしたことがありますね」。会社内にもペタペタと貼り付け、ファン獲得を目指した。メガホンを持って球場へ来てほしい-。そんな経験があるからこそ、満員の甲子園で戦えることに幸せを感じ、毎日を頑張れる。

矢野監督は「健斗はしぶといバッティングが持ち味。本当に決めてくれるだろうとは思っていたけど、素晴らしいバッティングだった」と褒めた。同一カード3連勝でツバメ退治に成功。これで貯金を今季最多タイの「3」とした。24日からは今季7勝2敗と得意にしているDeNAを相手に、貯金量産を狙う。「すごいいい雰囲気なんで明日からも頑張りたいと思います」。困ったときは頼れるキャプテンがいる。背番号33の躍動が虎を支えている。【真柴健】