“スギノール”が大暴れだ。日本ハム杉谷拳士内野手(28)が5回に右打席で今季1号ソロ。6回には左打席から2打席連続の2号2ランを放った。プロ11年目で初めての1試合2発。球団では07年6月にセギノールが記録して以来の左右両打席本塁打を決めた。1回の先制犠飛を合わせて4打点も初めて。元気印のスイッチヒッターが、初めて尽くしの活躍でチームの連敗を4で止めた。

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プロ11年目、28歳の杉谷が、お立ち台で高らかに改名を宣言した。「今日から僕は『スギノール』として頑張っていきたいと思います!」。球団ではパナマの怪人、セギノール以来の1試合両打席アーチ。そもそも1試合2発自体がプロ初だった。本人だけでなく、周囲も大興奮。インタビュアーを務めたNHKのアナウンサーも「杉谷選手ならぬスギノール選手」と紹介するほど。チームの元気印は、会心のコメントを豪快に決めて胸を張った。

1本目は得意の右打席で放った。5回1死。10球粘って辛島の133キロ直球を捉えた。「待っていれば必ず甘い球はくる。強い気持ちで甘い球を、しばきにいきました」と左翼席へ今季1号ソロ。快挙は続く6回に決めた。右腕今野から左打席から右翼席へ2号2ランを運んだ。

1試合両打席アーチはプロ野球史上19人目。価値ある記録だが、そこはいじられキャラのスギノール。ベンチへ戻ると、2本ともサイレント・トリートメントを食らった。歓喜のハイタッチを無視し続けられ「サイレント・サイレントで、ただの無視じゃないかなと思います」。底抜けの明るさから繰り出した最高の切り返しで、全てを笑いに変えた。

普段は選手ファーストのコメントに徹する栗山監督も、スギノールの2本塁打については「見てなかったですね」とニヤリ。まさかのイジりをかましたが、続けて「右と左は本当に難しい。ケンシはいろいろとやってくれるけど…本当に素晴らしかった」と両打ちの先輩として、しっかりたたえた。

初回の先制犠飛を合わせ、1試合4打点もプロ初だったスギノール。初もの尽くしで野球人生最高の輝きを放った。チームの連敗も4でストップ。「期待に応えられないまま10年が過ぎていた。左右両打席で打てたのは大きな1日」と満面の笑みで球場を後にした。【山崎純一】