ドラフト1位ルーキーが、優勝争いの佳境に向け、復活を遂げた。巨人高橋優貴投手(22)が、ヤクルト打線を相手に6回4安打1失点と好投。5月6日DeNA戦(横浜)以来、約3カ月ぶりの4勝目を挙げた。

チームは8カードぶり、今季5度目の同一カード3連勝。7日の中日戦から4連勝(1分け挟む)と勢いに乗って、12日から3位広島3連戦(マツダスタジアム)に臨む。

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高橋は、1つの誓いを胸にマウンドに立った。「今日は真っすぐで勝負する」。1球目、自らの意思を示すように、147キロの直球で広岡に空を切らせた。序盤から140キロ台後半の直球で押し、2回の中村にはこの日最速の149キロをマーク。腕が振れ、キレ、力もあるから、スライダー、スクリューを勝負球に選択すると、バットが空を切った。プロ最多タイの9奪三振。7個が変化球の空振り三振だった。

屈辱の2連発から、投球の土台となる直球への回帰を決断した。前回登板の7月31日広島戦。先頭の西川、菊池涼に2者連続で直球を本塁打され、プロ最短の2回1/3でKOされた。試合後、炭谷から「真っすぐでファウル、空振りが取れないと」と指摘され、目が覚めた。横振りで「肘が下がり気味」だったフォームを縦振りに修正。「上からたたくような意識」を染み込ませた。

白星から遠ざかった3カ月、1冊の本との出会いが考え方に影響を与えた。4月下旬の休日。ふと立ち寄った本屋の店内をブラブラと回った。題名だけを見て、ピタッと足が止まる。手に取ったのは元テニスプレーヤーの松岡修造の「弱さをさらけだす勇気」だった。その一節には、こんな言葉が記されていた。「弱さを隠してはいけない。認める事が大事」。

4勝目を前に、プロの壁に直面した。それでも、自分の未熟さを認め、前にだけ進んだ。先輩の山口に調整法や投球時の意識を聞き、この日の登板では、水野投手コーチらから助言を受け、プロ入りから取り組む2段モーションをやめ、無走者でもセットポジションから投球。「抑えるために変えた」ことが、約3カ月ぶりの白星をもたらした。

試合前から、2番手として、高田がブルペンで準備したが、高橋は「明け渡すか、と思って投げた」と執念を込めた。原監督は「5番目、6番目の先発投手がなかなかという点でね。彼にとっても、ジャイアンツにとっても非常に大きいですね」と評価。優勝争いを繰り広げるシーズン終盤を前に、ルーキーが力強く加わった。【久保賢吾】

 

◆巨人宮本投手総合コーチ(高橋について)「良かったねぇ。このファームの期間に山口俊道場に入ったみたいです。(6回、マウンドで会話し)中指辺りがつったと。でも大丈夫です」