巨人から来た「恋ちゃん」です! 楽天和田恋外野手(23)が、オリックス戦の8回にプロ初本塁打を放った。

持ち味である逆方向の右中間スタンドにたたき込み、記念すべき第1歩をしるした。7月に巨人からトレード移籍。昨季まで1軍でのスタメン出場はわずか1試合だった和製大砲候補が、杜(もり)の都で新たな野球人生を切り開いていく。

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プロになって初めてのお立ち台で自己紹介を求められるムチャぶりに、シャイな和田が精いっぱい声を張った。「巨人から来ました『恋ちゃん』です!」。インパクト十分の名前に負けない強烈なアーチを、仙台の夜空に描いた。

「時間はかかりましたけど、自分なりに頑張ってきてよかった」。全てが、この1本につながっている。昨季2軍で本塁打と打点の2冠を獲得も「2軍で打てたのも去年くらい。それまでは3軍にいる時間も長くて、正直しんどかった部分もあります。育成選手が多い3軍に、2桁番号の自分がいるわけですから」。悔しさにまみれながら、必死に歯を食いしばった。巨人で唯一スタメン出場した昨年6月23日のヤクルト戦も糧となっている。「ジャイアンツのユニホームで東京ドームに立つ。極限の緊張感だと思う。すごくいい経験をさせてもらった」と感謝を口にする。

移籍後、早くも14試合目のスタメン。直球をしばき、持ち味を凝縮した逆方向への1発だが、トレード後に浅村の打撃を見て思い知らされた。「ジャイアンツにいても、自分の中で右方向に飛距離を出せる自信はありました。でも、浅村さんを見て結構ショックを受けましたね。全然違う。上には上がいるんだな、と」。新たな環境で受ける刺激が、23歳のさらなる成長を促している。

ホームランボールは昨年5月に結婚した夫人に渡す。「妻は兵庫出身で、結婚して東京に出てきてくれて。生活環境とか、ようやく慣れ始めたと思ったところで仙台へのトレードでしたから。面と向かっては何も言いませんけど、正直大変だったと思います」。最愛の人への感謝を照れくさそうに口にしながら、大事そうに記念の1球をしまった。【亀山泰宏】