伝説の女房役が逝った。阪神で捕手を務めた山本哲也氏が13日、心臓疾患のため熊本市内の病院で亡くなったことが16日、分かった。

85歳。通夜・告別式は15日に近親者で執り行われた。

当日まで自宅で気丈だったが突然倒れ、救急車で熊本市内の病院に搬送された。意識は戻らなかったという。前日は孫と電話で食事の約束をしたばかりで、長男宏氏(52)も「まさかこのようなことになるとは思いませんでした」と語った。

1953年(昭28)に熊本工から阪神入り。正捕手として、村山実、小山正明、渡辺省三ら、そうそうたる投手陣を支えた。59年6月25日巨人との天覧試合(後楽園)でも村山の女房役としてマスクをかぶり、長嶋にサヨナラ本塁打を浴びたのは伝説の語り草だ。

62年は阪神のリーグ優勝に貢献した。854試合に出場して打率2割6厘、12本塁打、109打点。95年の阪神・淡路大震災で被災し、住まいを甲子園近くから熊本に移していた。今年4月にはツエをつきながら外出し、阪神投手陣の球威で曲がったままの左親指を前に差し出しながら「おれの勲章だよ」となつかしんでいた。【寺尾博和】

▽阪神元監督吉田義男氏(日刊スポーツ客員評論家) また1人、戦友を失った気分です。わたしが1つ年上ですが、プロ入りは同期でした。哲ちゃんは穏やかな性格ですが、捕手としては強気でした。昭和37年の優勝はかけがえのない思い出です。ご冥福をお祈りいたします。