ソフトバンク千賀滉大投手(26)が巨人打線の前に立ちはだかった。「SMBC 日本シリーズ2019」がヤフオクドームで開幕。史上3人目となる3年連続日本シリーズ開幕投手を託された千賀は、2回に阿部の先制ソロを浴びたが、7回3安打1失点の力投。エースに導かれたチームは先勝し、日本シリーズ本拠地13連勝。ソフトバンクとしてセ6球団全制覇へ好スタートを切った。

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7回2死二、三塁のピンチで、代打重信を147キロカットボールで見逃し三振に仕留めると、千賀はグラブをパーンとはじいた。「調子はあまりよくなかったが、捕手の(甲斐)拓也が『全部の球種を使っていくぞ』と。信じて投げた」。最速159キロの直球に代名詞のお化けフォーク、カットボール、スライダーと持てる力をすべて出した。巨人打線を7回、106球で1失点に抑えた。

「先制されたのは反省。1、2、3で打たれた。めちゃくちゃ吹っ飛んでいったな」と2回に阿部に右中間スタンドへ先制ソロを許した。小さいころからプロの世界で中心にいた選手との対決は最初に1発を浴びたが、しっかりと残り2打席やり返した。3年連続の日本シリーズ開幕投手。勝つだけでなくシリーズ全体を考えてのマウンドでもあった。「2戦目以降へつなげるということは意識していた」。ポイントとなる上位打線、1番から4番までは無安打に封じた。「そこはまだ試合が残っているので」と言葉を濁したが、工藤監督も最も警戒する丸に徹底して内角を突いた。イニング間が長いなどの日本シリーズ特有の事象にも3年連続の経験で対応した。

ネット裏には愛知・蒲郡市から両親がかけつけていた。「こんな場所から初めて見ますよ。球の軌道がよくわかる」と言う父直伸さんの前で成長した投球を見せた。9月19日オリックス戦の3回に打球を右膝に受けた。父直伸さんは「いつもはどんな時でも心配して連絡すると『大丈夫』としか返事が返ってこないのに、その時だけは『痛い』って返ってきたんですよ」。それでも周囲には弱みを見せなかった。中4日で楽天戦に登板。6回2失点でV逸し、責任を抱え込んでいた。CSファーストステージ初戦でも4被弾で敗戦投手。悔しい試合が続いたが、11日のCSファイナルステージ西武戦では、山賊打線を8回2安打無失点に封じた。そして日本シリーズ白星発進。工藤監督も「よく粘ってくれた」と最敬礼だ。

千賀はお立ち台で「あと3つ勝って日本一になります」とファンに3年連続日本一を約束。自分の右腕で、しっかりとその道筋をつくった。【石橋隆雄】

▼千賀が3年連続でシリーズ初戦に先発し、17年第1戦以来の通算2勝目。3年以上続けてシリーズ初戦で先発は、69~72年堀内(巨人=4年)76~78年山田(阪急)に次いで41年ぶり3人目で、ソフトバンクでは初めて。シリーズ初戦での勝利数は堀内(巨人)渡辺久(西武)の3勝が最多で、2勝以上は12、13年内海(巨人)以来12人目。チームでは南海時代の61、64年に勝利したスタンカ以来2人目で球団最多タイ。