【台中(台湾)7日】侍ジャパン4番鈴木誠也外野手(25)が2試合連発で「プレミア12」1次ラウンド3連勝に導いた。大会3戦目の台湾戦は1回に先制の適時三塁打、2点リードの3回には強い逆風をものともしない2ラン、9回にも適時打を放った。投手陣は先発今永昇太投手(26)の3回無失点から小刻みな継投でつなぎ、1失点にとどめた。日本と同じくすでに1次ラウンド突破を決めていた台湾戦で価値ある1勝を挙げ、対戦成績が持ち越されるスーパーラウンド1勝分もゲット。頂点へ、文句なしの3連勝で台湾に別れを告げる。

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台湾の強風が大飛球を押し戻す。鈴木の脳裏には確信と不安の両方が交錯したという。「感触は良かったけど風も強かったので…」。祈るように白球を見つめながら走りだした。

2点リードの3回2死一塁、3ボール1ストライク。2番手左腕・王宗豪の真ん中139キロ直球を狙いすました。左翼から右翼に強く吹く逆風とフルスイングの対決。ボールは左中間席に届いた。流れを引き寄せる2ラン。4番は勝った。

「ここ2試合は応援も少なくて、お客さんも少なかった。そういう意味では楽しくできました」

完全アウェーの台中球場さえ心地よかった。観客席は台湾応援団で超満員となり、試合前から異様な盛り上がり。応援歌が爆音で流れ続ける中、男性によるマイクパフォーマンス、チアガールによる激しいダンスがさらに熱気を高めていた。1球1球に大歓声が飛ぶ環境。それでも鈴木は雰囲気にのまれなかった。

前日6日には「自分は外野で歌っていることが多い。(台湾の大応援を)楽しみたい」と笑顔。その言葉通り1回は先制の中越え適時三塁打。右翼守備では三塁へのレーザービームで球場を静かにさせ、7回には2戦連続の二盗も披露した。「打席に入ったら相手との勝負になるから(応援は)聞こえない。守っている時は楽しめました」。9回には適時打まで決めた。

振り返れば大会初戦前日の4日、侍ジャパンの球場ロッカールームにローストダックが差し入れられていた。贈り主は台湾代表の若きスター、日本ハム所属の王柏融。台湾では正月によく食べられるごちそうに感謝しつつ、勝負に入れば情は一切排除。4番は感謝の思いをバットに込めた。

台中は14年11月、侍戦士としてU21野球ワールドカップ決勝で台湾に敗れた舞台。当時の悔しさを1試合4打点で晴らし、ここまで3戦9打点、2盗塁は12カ国でトップ、2本塁打も最多タイの数字だ。堂々たる成績で1次ラウンド3連勝に導き、決勝ラウンドの地、日本に戻る。「全部勝つつもりで試合に臨みたい」。何事にも動じない。日本の4番は誰の目にも頼もしい。【佐井陽介】