5月に現役を引退した上原浩治氏(44)が特別インタビューに応じ、野球の世界ランク上位国で争う「プレミア12」スーパーラウンドについて展望を語った。勝ち上がってきた各国の1次ラウンドでの戦いぶりをチェックした上で、決勝は日本と韓国の争いになると予想。日米で幾多の修羅場をくぐり抜け、国際試合で無敗を誇った経験から、侍ジャパンが世界を極めるポイントを指摘した。(本文敬称略)

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-では、ズバリ日本は優勝できますか

上原 …日本は強いと思うけど、圧倒的な強さはないなぁ。

-若手の有望選手の多いアメリカや、強打でそのアメリカを破ったメキシコもいますよね

上原 確かに両チームとも打力のチーム。でも、日本のライバルになるのは韓国じゃないかな。

-どちらが勝ちそうですか?

上原 予想するのは難しい。他の国がどこのチームをマークするのかにも変わってくるし。でも日本と韓国は投手力がある。やはり短期決戦は投手の総合力があるチームが有利だと思う。決勝戦は日本と韓国になるんじゃないかという予想はできるけど、どちらが勝つかとなると、難しい。決戦前になれば、どちらが勝ちそうか決められると思うけど。今の段階だと決められない。

-そんなに韓国は強いですか

上原 優勝すれば兵役を免除してもらえると聞いているし、今までの世界大会を見ても、そうなったときの韓国は手ごわいんですよ。(※韓国の兵役免除の条件は、通例だと五輪で銅メダル以上かアジア大会で金メダルを獲得すること。そのためには今大会で日本を除くアジア・オセアニアの最上位国となり、東京五輪出場権を確保する必要がある)実際、台湾で戦った韓国戦を見たけど、とにかくピッチャーがいい。打線もまずまずでしょ。

-日本が勝つためには

上原 投手の「使いどころ」が重要になるでしょう。俊(山口)がオーストラリア戦に先発するのはいいと思う。メキシコやアメリカは強打のチームで、でかい投手に慣れている。そういうチームには高橋君みたいな投手が合う。調子のいい投手に余力を持たせ、韓国戦に投入していければ勝算は上がるんじゃないかな。

-最多勝投手の山口は弱いチームに、ってことですか? 一緒にご飯を食べたりする仲なのに、厳しいですね

上原 そういう意地悪な言い方はやめましょう。力がないとかじゃなくて、あくまで相性を想像して言っただけ。アメリカやメキシコで野球をする打者は、体の大きい投手に慣れているから。(東海大仰星の同級生)建山が投手コーチをしているから、その辺のことは分かっていると思います。

-バリバリのメジャー選手がいないといいますが、メキシコやアメリカも強そうですよね

上原 でもこの両チームには、付け入るスキがある。投手力が弱いし、メジャーの野球は大ざっぱ。走塁やポジショニングなんか、スキが多い。短期決戦になれば、そういうスキが勝敗を分ける。特にアメリカは若くて有望な選手はいるけど、そういうきめ細かい野球はできない。メキシコにも同じことが言えるんじゃないかな。

◆上原の国際大会 大体大時代を含め25試合で12勝0敗2セーブ、防御率1・92と抜群の成績。プロ入り後は03年アジア選手権(兼アテネ五輪予選)から08年北京五輪まで5大会で代表入り。06年WBCでは準決勝の韓国戦で7回無失点と好投するなど、3試合で2勝0敗、防御率1・59。先発の柱としてMVPの松坂(3試合、3勝0敗、防御率1・38)と同等の成績を残した。

◆上原浩治(うえはら・こうじ)1975年(昭50)4月3日、大阪府生まれ。東海大仰星から1浪して大体大進学。98年ドラフト1位で巨人入団。1年目から20勝を挙げ、2度の沢村賞などエースとして活躍した。08年オフにFAでオリオールズ移籍。レッドソックス時代の13年には抑えでワールドシリーズ制覇。大リーグでは4球団でプレーし、18年に巨人へ復帰。19年5月20日に現役引退を表明した。04年アテネ五輪、06年WBC、08年北京五輪代表。187センチ、87キロ。右投げ右打ち。