来季こそはジャッカル! 左足首手術から復帰を目指す阪神糸井嘉男外野手(38)が11日、兵庫・西宮市内の球団事務所で契約交渉に臨み、現状維持の4億円プラス出来高で更改した。来季4年契約の最終年を迎える超人は、独特の糸井節でワールドを展開。今年、一世を風靡(ふうび)したラグビー界の流行語を使って決意を示した。(金額は推定)

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超人の脳裏にあの興奮がよみがえった。サービス精神旺盛な糸井が、抜群の言葉のチョイスで笑いを取った。契約最終年の来季に向けて意気込みを問われると、「ケガで自分の中ではけっこう苦しい思いをしたので、そのうっぷんを晴らしたい」と真顔に。そしてニヤリと笑って「いろんなモノを…ジャッカルしたいっす!」。数秒の沈黙を経て大爆笑。会見場をドッと沸かせた。

ジャッカルと言えば、ラグビーW杯で日本代表FW姫野和樹が得意としたタックルで倒した相手のボールを奪うプレー。「2019ユーキャン新語・流行語大賞」にもノミネートされたラグビー旋風の代表的なフレーズを用いて決意を語る-。さすがの糸井ワールドだ。

悔しさが残るシーズンだった。8月9日広島戦で盗塁を試みて滑り込んだ際に左足首を負傷し、10月上旬にメスを入れた。「歩くのもままならないくらい2カ月くらい痛かって、手術させてもらって原因も取り除いた」。打率3割1分4厘と上昇気流に乗り始めた時期に戦線を離脱。そのままシーズンを終え、103試合出場と5本塁打、42打点は移籍後最低。11年続けた2桁盗塁も途切れた。

オフに入ってからも若手選手に交じって鳴尾浜で汗を流す。「やっぱりジャンプが一番負担が掛かるけど、今は片足ジャンプも出来ている」。ランニングも徐々に強度をアップ。交渉の席に着いた谷本球団副社長兼本部長も「ヤバイですと何度も言っていた」と笑って明かすほど順調に回復している。糸井本人は患部の状態を「98%」とし、来春キャンプには「102パーくらい。2パープラス」とパワーアップさせると宣言した。

リハビリ中はラグビーW杯で日本列島が沸いた。糸井も「めっちゃ見てました」とテレビにくぎ付けになった1人。ちなみに気になったチームは「南アフリカ!」。では、虎の超人がジャッカルしたいものとは…。「やっぱり優勝。優勝を目指して1年間、戦力として活躍できるように。それが一番目標です」。虎移籍4年目。勝負の契約最終年に矢野監督を胴上げする。【桝井聡】

◆ジャッカル 攻撃側の選手がタックルされた際に、守備側の選手が相手ボールを奪い取るプレー。タックルで倒れた選手はボールを離さなければならず、守備側が両腕で絡んで、離さなくさせることで反則を誘う。日本代表では姫野が得意とされ、W杯で何度も日本の窮地を救った。元オーストラリア代表でサントリーにも所属したジョージ・スミスが相手ボールを奪う名手で、死肉を食べる犬科のどう猛な動物にちなんで「ジャッカル」という愛称で呼ばれていたことから、この名称が定着。日本代表ではアマナキ・レレイ・マフィもこの技が得意。

▽阪神谷本球団副社長兼本部長(糸井について)「(離脱後の)失われた40試合、そこは糸井君がいなくてチームとしてしんどいところがあった。本人が一番痛かったと思うが。(ジャッカル発言を聞き、笑いながら)また意味不明な。優勝を奪いとるということですかね。そのあたりの心意気は感じました」