不屈の精神で大台達成や! 阪神梅野隆太郎捕手(28)が16日、兵庫・西宮市内の球団事務所で契約交渉に臨み、倍増の年俸1億円でサインした。球団生え抜き捕手では初となる大台到達で、球団は期待料込みで評価した。今季序盤に左足薬指を骨折しながら戦い続けた男が、契約更改の大トリを飾った。(金額は推定)

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グレーのスーツに身を包み、引き締まった表情で梅野は語った。「この世界に入ってきて、評価をされるためには試合に出続けないといけない。そこで成績も残さないといけない。そういうシビアな世界だと感じた時から、この大台を目標にやってきた」。史上69人目のサイクル安打やプロ野球新記録のシーズン123補殺を達成し、2年連続ゴールデングラブ賞を受賞。さまざまな偉業を成し遂げ、「一流の証し」である大台に達した。谷本球団副社長兼球団本部長も「伸びしろを感じた。期待料も含めて」とご満悦な様子で大トリの交渉を振り返った。

小さい頃からの夢に届いた裏にある決断があった。開幕4戦目の4月2日巨人戦の2回、三塁内野安打を放った際に、一塁ベースで巨人岡本と交錯して転倒。左足薬指骨折と診断された。正捕手の離脱危機。矢野監督から「最短で戻ってきてほしい」と懇願され、悩んだ。治療を優先して出場選手登録を外れるか、試合に出場しながら回復を目指すのか。「チームのためにも自分で判断、決断しないといけなかった」。梅野が出した結論は強行出場。2試合を休んだだけで、3日後から先発マスクをかぶり続けた。そんな手負いの中で4月9日DeNА戦のサイクル安打は生まれた。「あの決断があるからこそ、今シーズンやりきれた。分岐点でいい決断ができたし、一番のポイントだったと思う」。6年目でいずれも自己最高の打率2割6分6厘、9本塁打、59打点と結果を残した。

それでも不屈の男に慢心はない。「自分に対してプレッシャーを与えていく。金額とか評価をプレッシャーに感じながら。それをはねのけるくらいのプレーをしていきたい」と強気発言。虎には来季も、頼もしい扇の要がいる。【只松憲】

◆阪神捕手の年俸1億円 現監督の矢野燿大(最高は06、07年2億2000万円)、城島健司(10~12年4億円)に次ぎ3人目。生え抜きとしては初となった。また今オフの5000万円アップは、阪神では藤川の6000万円増(1億4000万円↓2億円)に次いで2位。野手では最高アップ額だ。