犬鷲、日の丸、そして家族の大黒柱になる。楽天松井裕樹投手(24)が来季の先発転向を明言した。17日、仙台市内の球団事務所で契約を更改。1億4000万円増の年俸2億5000万円プラス出来高で新たに4年契約を結んだ。

今季は自己最多38セーブで自身初のセーブ王を獲得。地元横浜で開催される東京オリンピック(五輪)のマウンドを見据え、転向を決断した。昨年12月に結婚した女優石橋杏奈(27)との間に来夏、第1子が誕生予定。公私ともに“一家”を支えていく。(金額は推定)

   ◇   ◇   ◇

少々緊張気味に、松井が答えた。「来シーズンは、えー、先発…を、やります」。自身初タイトルのセーブ王からの転身。「元々先発をやりたいという気持ちでプロ野球に入りましたし、タイトルもとらせていただいた。どこかで先発に戻りたいと常に思っていた。27、8歳ではちょっと遅いかなと」。石井GMをはじめ、球団首脳陣と話し合いを重ね、両者の考えが合致。まっさらなマウンドへたどり着いた。

ぶれない夢が背中を押した。言葉の裏には、東京五輪への思いがある。野球の舞台は世に名をはせた桐光学園時代、汗と涙を枯らした横浜スタジアム。「五輪が横浜であるなんて、一生に一度しかない。絶対に出たい」。

本大会の代表メンバーは24人。“少数精鋭”に入り込むには“自在性”が必要だと考えた。事実、今季救援から先発転向したオリックス山本が11月のプレミア12ではセットアッパーとして躍動。2年目から守護神としてキャリアを歩む松井は「先発で結果を残せば、いろんなことができる選手として呼んでいただける可能性はあると思う」と予想図を描く。日本が頂点に立った同大会は左ひじ違和感で辞退。「迷惑をかけたし、悔しい。侍に貢献したい思いは常にある」と日の丸への思いはさらに募った。

もちろん、目先だけではない。「体の負担のこともある。今の投球スタイルで何十年投げ続けるというのが想像できなかった」。真っ向勝負が信条。ただ、体の衰えに対応すべき時のために、引き出しを作りたかった。先発では、カーブや今年は使用しなかった大きく縦に割れるスライダーの活用も頭にある。

柱としての自覚が士気をいっそう高める。来夏、第1子が誕生予定。「今までになかった新しい感情、思いは自分の力にできると思う。家族の力をもらって頑張りたい」。背負うものが大きいほど、最高の未来が待っている。【桑原幹久】