阪神元投手コーチの中西清起氏(57=日刊スポーツ評論家)が21日、沖縄・北谷で開催中の中日キャンプに「潜入」した。与田監督ら首脳陣を取材し、「2番高橋」と「新人左腕橋本」を警戒。昨年、10勝14敗1分けと負け越した相手に、矢野阪神がどう巻き返すかを分析した。

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中西氏は中日のキャンプ地を訪問するや、旧知の与田監督や伊東ヘッドコーチ、村上打撃コーチら首脳陣に精力的に声をかけた。会話の中で感じたのが、得点力アップへの強い決意だ。

中西氏 打線はいい打者がそろっているにも関わらず、昨年のチーム総得点数はリーグ5位。与田監督も「得点が100点少ない」と言っていた。いかに点を取るかを考えていた。その秘策として、「2番高橋周平」の構想がある。主軸に1発のある選手がいれば、オーソドックスに2番にバントさせて投手に重圧をかけてもいいが、4番ビシエドは打率を上げるタイプ。2番に攻撃的な打者を置いた方が、4番の二塁打で走者をかえせる。そういうプランを描いている。ナゴヤドームは1発が出づらい球場だ。ツーベースを増やし、足を絡めながら、得点力の向上をもくろんでいる。

2年目根尾の成長も期待されているが、中西氏の取材によれば、「京田の遊撃は外せない。根尾は外野なら、そこそこいけるのでは」というのが首脳陣の見方。打線はビシエドを中心に、大島、平田、アルモンテら昨年のメンバーから大きく変わることはなさそうだ。

中西氏はブルペンも視察。気になる存在がいた。ドラフト2位の橋本侑樹投手(22=大商大)だ。左腕から、150キロ近い直球を投げる。猛虎は昨年、梅津や山本らにプロ初勝利を献上。初モノに弱かった。

中西氏 与田監督も言っていたが、投手陣は未知数な部分が多い。高卒3~4年目の投手が多く、橋本、岡野と即戦力ルーキーも2人とった。リリーフ陣も含めて、経験を積ませながら、戦わざるを得ない。ブルペンで見た橋本はおもしろい存在だ。体の線は細いが、球のキレがいい。阪神は去年、初モノに弱かったので、警戒する必要はある。

矢野阪神は19年シーズンを3位で終えたが、中日には10勝14敗1分けと負け越した。逆襲なくして、リーグ制覇はない。いかに戦うべきか。

中西氏 阪神は外国人次第ではあるが、両チームともに打線の破壊力はそこまでない。1点にこだわる野球という点では、互いにそういうチームカラーだ。4-3、3-2という感じで、点差が開くゲームにはならないだろう。ブルペンは阪神に分がある。エンドランや犠打という攻撃を組み合わせながら、いかに相手より1点多く取るかが鍵を握る。戦力的に見ても、4つも借金したらダメだ。中日に勝ち越さないと優勝争いには入っていけない。

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▼阪神の昨季の中日戦での、チーム打率2割3分5厘、75得点はともに対セ・リーグ球団では最低だった。1点差試合では2勝5敗で、借金3はカード別最悪。一方チーム防御率3・15は対セ球団別2位と健闘しており、投手陣の踏ん張りに打線が応えていない構図が浮かび上がる。

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◆橋本侑樹(はしもと・ゆうき)1998年(平10)1月8日生まれ、福井県出身。高浜中時代は若狭高浜ボーイズに所属。大垣日大では1年夏に甲子園出場。開幕有田工戦で救援登板も敗戦投手。大商大では大西広樹(ヤクルト4位)との二枚看板で活躍。4年秋京産大戦のノーヒットノーランなど関西6大学リーグ通算12勝5敗、防御率2・58。19年ドラフト2位で中日入団。180センチ、71キロ。左投げ左打ち。背番号13。