阪神近本光司外野手(25)が22日、12球団最多タイのキャンプ実戦3号を放ってまた度肝を抜いた。オープン戦初戦の中日戦(北谷)に2番中堅で出場。4回の第3打席、山井から逆風を切り裂くソロを右翼席に運んだ。「恐怖の2番」の長打率は驚異の9割9厘。3発競演&2年目矢野阪神のオープン戦白星発進を導いた。ポパイもびっくりのパワフル打撃に進化中の背番号5が、ますます楽しみだ。

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快足自慢の近本がまた、ダイヤモンドをゆっくり回った。4回1死走者なし。獲物は中日2番手右腕、41歳山井の内角高め137キロ直球だ。打球は逆風を切り裂き右翼席に着弾。2年目矢野阪神のオープン戦白星発進を導く、ダメ押しのソロとなった。「2打席目も自分の中では納得した形で打てたので、良かったかなと思います」。3回の第2打席は捉えた打球で大きな中飛。直後の打席で、好感触を結果に変えた。

好打者から強打者へ。紅白戦や練習試合を含むキャンプ実戦は、広島西川と並ぶ12球団最多の3本塁打。1打数あたりの塁打数の平均値を表す長打率(打数÷塁打)は、主軸打者もびっくりの9割9厘だ。昨季のリードオフマンから、今季は矢野監督の新構想で2番に座る。新打順でここまで全8試合に出場し、指揮官が求める攻撃的要素を十分過ぎるほど発揮している。

「しっかり高めのボールを打ちにいけているのと、力まずしっかり捉えられていることが一番です」。長打率アップの要因をそう自己分析した。今キャンプから「脱力打法」に改良。力みをなくし、スムーズにバットを出すことを心がけている。アーチを生む土台は中学時代から取り組む軸回転を意識したフォームにある。171センチ、72キロと決して体は大きくないが、軸で回ることで飛距離が出る。その軸回転に今春キャンプから脱力打法を加え、配球の読みも鋭さがアップ。この3点セットでポパイ顔負けの長打を量産している。

矢野監督もさらに目を細めた。「今年に入って引っ張っている打球が結構多い。ランナーが一塁にいる状況であれば一、二塁間と三遊間が空くことが多い。そういうところで引っ張れるのは相手はイヤ。逆にそれを突ければ、三遊間に打てることにもなる。いい打球がいっているし、ますます楽しみ」。攻撃のバリエーションはますます広がる。

だが近本は満足はしていない。「タイミングが外れた時にどういう風に修正するかはまだ足らない。オープン戦のうちにできる、いろんなことをやっていきたい」。打って貪欲。猛虎史上最強の2番が誕生するかもしれない。【奥田隼人】

 

▽阪神井上打撃コーチ(近本について)「放っておいても今日はこういう練習をしよう、とかプランニングできる。何も心配してません。『去年を超えろ』をテーマにしてるので、去年を超えてくれると思います」

◆2番打者の長打率 昨年のセ・リーグMVP坂本勇人(巨人)は、同年先発2番打者として117試合に出場。この打順で34本塁打を放ち、長打率5割8分1厘。先発2番でNPB最多の37本塁打した06年リグス(ヤクルト)は5割6分5厘。00年小笠原道大(日本ハム)は2番で27本塁打を放ち、5割6分9厘だった。なお00年以降の阪神で100試合以上スタメン2番で出場した選手のうち、長打率最高は10年平野恵一の4割2分3厘。近本が長打力を備えた2番打者として活躍すれば、球団では異色の存在となる。

◆長打率 打者の長打力を示す指標。塁打÷打数で計算される。プロ野球シーズン最高記録は、13年バレンティン(ヤクルト)7割7分9厘。阪神最高は86年バースの7割7分7厘で、バレンティンに抜かれるまで球界1位だった。