止まらない。広島鈴木誠也外野手(25)が先制ソロを含む2打席連続弾を放ち、勝利に導いた。開幕7試合で早くも5本塁打と量産。本塁打だけでなく、打率、打点、出塁率もリーグトップの数字を残す。日本の4番となっても成長を止めないコイの主砲は、無観客試合の環境にも左右されない。1球への集中力を研ぎ澄まし、今後も快音を響かせる。

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無音の打席でも、集中力は研ぎ澄まされていた。両軍無得点の2回。鈴木は、フルカウントから中日大野雄の低めツーシームに食らいついた。コンパクトにバットを振り抜くと、打球は伸びて左中間席へ。4回の第2打席は第一ストライクを捉えた。低め145キロを強振。中堅左、カメラマンとともにスタンドにいた中日のマスコット「ドアラ」もびっくりする特大弾で試合の流れを完全に広島に引き寄せた。

「たまたま甘いところにきて、1発で仕留められた結果。(中日大野雄は)いい投手なのは間違いないので、集中していきました」。

そう振り返ったが、いずれも甘い球ではなかった。開幕前には「やっぱりここぞのときの集中力が難しい」と戸惑っていた無観客試合も「シーズンが始まってしまえば気にならない」。環境に左右されない集中力が好結果を生む。開幕7試合で打率4割6分2厘、5本塁打、9打点はリーグ3冠。5割4分8厘の出塁率を含めれば4冠の好スタートだ。

前日25日巨人戦3回に空振り三振を喫すると、バットを振り下ろして悔しさをあらわにした。1打席、1球にかける思いの強さは試合に限ったことではない。練習のティー打撃1球を打ち損じても「本気で悔しがる」と裏方は証言する。試合前のフリー打撃にも納得がいかなければ、自ら素振りを課して修正箇所を確認する。7戦26打数12安打も、ヒットにならなかった14打席と向き合っている。

広島は3試合連続2桁安打で引き分けを挟み2連勝。いずれも決勝点は鈴木誠がもたらした。佐々岡監督は「4番が打って、エースが好投して、理想の形だったと思う」と2戦連続完投の大瀬良とともに打の主軸に賛辞を送った。鈴木誠は「チームのために自分ができることをしていきたい」と、遊ゴロに終わった最終打席の悔しさを胸に次の戦いを見つめた。【前原淳】