頼れる4番だ。楽天浅村栄斗内野手(29)が5回に逆転3号3ランを放ち、この回10得点の呼び水となった。回ってきた2度目の打席でも適時打を放ち、球団初の1イニング5打点。同最多タイの1試合7打点まで伸ばし、日本ハムを奈落の底へ突き落とした。24日の同戦でも、5回に逆転3ランを放ったばかり。無類の勝負強さで白星を引っ張り込む。

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敵の心まで打ち砕いた。2点を追う5回無死一、三塁。浅村が放ち、舞い上がった打球は柵から乗り出した左翼手杉谷のグラブの網をかすめてスタンドイン。ゲームの潮目が変わったことを悟った杉谷はうなだれ、フェンスに腰をかけた。浅村は「『入ってくれ』と思いながら走った。犠牲フライかと思ったので、びっくりしました」。日本ハム玉井の交代直後、初球。内角シュートに詰まりしびれたのか、ベンチ前で手を振りながらナインの祝福に応えた。

揺さぶりには動じない。シーズンでは初の同一カード6連戦。序盤から日本ハムバッテリーから執拗(しつよう)に内角を突かれたが「同一カード6連戦は初めてのことで、難しさもある。向こうのやりたいことに引っ張られないように。強引に打つのではなくて、しっかり甘い球だけを狙うように今日までできていた」。逆転3ランの打席も「インサイドを1球待った」と初志貫徹。25日にバットを折られて凡退した玉井のシュートを捉えた。

豪快、かつ繊細なフルスイングに死角が見つからない。再び回った5回にはスライダーを右越え、8回には中堅フェンス直撃と打ち分け、ともに2点適時打。自主トレでは打撃練習の大半をロングティーに割く。全身を使い切り、これでもかと大きなフォロースルーをとる。ド迫力をオブラートとしてバットとボールの角度、逆方向への意識を高く持ち、相手バッテリーに恐怖を与え続ける。

球団初の1イニング5打点に加え、08年フェルナンデス、12年牧田に並ぶ球団最多タイ、自身3年ぶり2度目の1試合7打点。暴れに暴れた。「覚えてないです。記録という記録じゃないので」。打ってほしい時に打ってくれる。東北楽天ゴールデンイーグルスの4番には、ぶれない浅村がいる。【桑原幹久】