楽天則本昂大投手(30)が力強くチームを単独首位に押し上げた。先発した西武戦(メットライフドーム)は7回7安打2失点、120球の熱投でチームを開幕から4カード連続の勝ち越しに導き、涌井と岸に続いて開幕2連勝。最強先発陣の一角を成す右腕が、チームのスタートダッシュを加速させた。

魂がこもった1球だった。則本昂の雄たけびがメットライフドームにこだました。1点リードの6回2死二塁。西武のルーキー若林。5回にプロ初本塁打を献上した相手を1-2と追い込み、最後は139キロのフォークで空振り三振を奪うと「ヨッシャー」と小さくガッツポーズ。あふれ出る気迫はグラブを右手でたたいた甲高い「ポンっ」という音にも表れていた。

続く7回も3者凡退で120球の熱投を締めくくった。「前回できなかったことが今回できたので、1つレベルアップできたかなと思う」と、1週間前は投げきれなかった7回を投げ切った。

気持ちを前面に押し出す投球スタイルを今季は復活させた。「去年は開幕してすぐは無観客でやっていて、湧き上がってくるものとかがあまりなくて…」。振り返ればシーズンを通して精神面の高揚は少なかった。得た教訓は「1発目に気持ちの出力というものを出していかないと、1年間うまく回らない」。今季初登板で雄たけびやガッツポーズが多かったのは、本来の自分らしい投球を取り戻すために必要な作業だった。

2点を返された5回は、森から空振り三振を奪ってピンチを切り抜けた。「どんな形でもアウトを取って帰りたかった」とギアを上げた場面。1週間前に心のメーターを振り切っていたから、気持ちのこもった強い球で難局をしのげた。

実力者ぞろいの先発陣で後れを取るわけにはいかない。「僕も続きたいなという気持ちもありました」と涌井、岸に続いて開幕2連勝。レベルの高い切磋琢磨(せっさたくま)がチームをさらに上昇させていく。【木下大輔】