西武栗山巧外野手(38)が、通算2000安打を決めた。西武では球団初となる生え抜きでの達成。栗山の1年目に2軍打撃コーチを務めていた西武田辺徳雄3軍統括コーチ(55)が、2人の思い出を振り返った。

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18歳の栗山に、荒々しさの中にも非凡な可能性を感じとっていた。プロ入り1年目の02年。2軍打撃コーチに就任したばかりの田辺コーチは「練習は量も質もやりました。こっちが音を上げるくらい。彼が打てなかったゲーム後が一番憂鬱でした。これは『お願いします』って来るな、と。今日は長くなるぞってね」。朝から早出練習して、ビジターでの2軍戦を終え、所沢に戻ってからまた打った。まさに練習の虫だった。

力任せに引っ張る強引な打撃。これではプロでは通用しない。荒っぽさを削り「アベレージバッターで、野手の間を抜くようなヒットをどれだけ打てるか。そのためには逆方向に強い打球を広角に打てないと数字は残せない」。食らいつく栗山に練習メニューを試行錯誤。山なりのスローボールをよく打たせた。バイアスロンから着想を得て、150球近く連続で打たせて、呼吸が乱れている状態で1球集中して打たせたりもしたという。

選球眼はもともとよかった。何より内に秘めた闘志が宿る「目力」を買っていた。「あれは戸田に行ったとき」。ヤクルト2軍施設での試合でスタメン外。バット引きの雑用にふてくされているように見え、注意すると「カッとした目に、あ、殴られるんじゃないか、ってね(笑い)。その後からですよね、ますます練習がハードになったのは」。

「Hランプを点灯させろ」。田辺コーチから言われ、栗山はどんな形でもいいからヒットを打つことに闘志を燃やせ、と解釈して積み上げた。「というのは、完璧に打ち返して、ヒットを求めるのではなくて、打ち損じの打球でもヒットはヒットなんだから、それで喜べと。完璧な当たりでのヒットなんて年間数えるくらい。いちいち考えるなよと。ありがたいことにHのランプがついたらヒットはヒットですよ」。スコアボードにともるHランプが、野球人でいられる証しだった。

同コーチが1軍監督だった16年、栗山は三遊間をきれいに破る左前打で通算1500安打を達成。「あそこへの打球は若いころ、田辺監督と死ぬほど練習してきましたから」。そのコメントに同コーチは「死ぬほどって。ちょっと大げさでしたけど」と照れ笑い。「当時の粗削りを思い出したら、やっぱり2000本って想像できないな」と言って、また笑った。

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