鬼采配がCS史上初のドラマを生んだ。1点を追う9回無死一、二塁。途中出場の小田がバントの構えを見せた。そこから一転、初球バスターで強攻。強気に打って出ると、打球は一塁線を抜けた。ヒーローは両拳を突き上げ、歓喜のウオーターシャワーを浴びた。“サヨナラドロー”で日本シリーズ進出が決定。中嶋監督の奇策が的中した。

「バントの頭もあった。ただ、向こうの守備(陣形)も考えて…。選手を信じて、つなぐことを頭に入れた。最高の結果。全員で勝つことができてよかった! しんどかったです!」

中嶋イズムが浸透している。2軍監督に就任した19年から、選手に伝え続けた言葉がある。「責任は取る。サインを実行して失敗したら、こっちの責任。だから、何も考えなくていい。真っすぐに挑戦を」。勝ちに対する執念、マインドを植え付けて3年目。「臆することない環境をつくってあげたい」と選手を思い、2年連続最下位のチームは変わった。「絶対に最後まで諦めない気持ちがある」。1勝するたびに、覚える快感。その連続が、新生オリックスの快進撃を生んだ。

交流戦優勝は無観客試合。リーグ優勝決定時も、スタンドにファンは入場できなかった。この日、初の歓喜セレモニーに立った指揮官は「優勝しました! 日本シリーズも決めました! あとは…その先まで行きたいです!」と日本一を約束。最後はファンの前で3度、宙に舞った。

対戦相手は中嶋監督が現役時代の95年に日本シリーズで敗れたヤクルトに決まり「なんとかやり返したい」。20日に本拠地・京セラドーム大阪で開幕する日本シリーズは、第6、7戦をほっともっと神戸で開催予定。「帰ってこないようにしたいですけど…神戸で決めたい気持ちもある」。悲願へ愚直に突き進む。「まだ集大成じゃない。全員で戦っていきます!」。26年前に描いた青写真に、トライする。【真柴健】

▼オリックスがCSファイナルSを制し、96年以来25年ぶり13度目の日本シリーズ出場を決めた。日本シリーズの出場ブランクで25年ぶりは4位タイ(最長は98年横浜の38年ぶり)。

▼オリックス中嶋監督は就任1年目。新人監督のシリーズ出場は15年の工藤監督(ソフトバンク)真中監督(ヤクルト)以来18人目。無傷でプレーオフ、CSを突破した新人監督は12年栗山監督(日本ハム)15年工藤監督(ソフトバンク)に次いで3人目。

▽オリックス山本(第1戦で完封)「初戦ということでCSの勝利を左右する1試合。思い切って投げました。若手の選手が思い切ってできる環境をつくってくれている。監督のおかげだと思っています。本当に監督のおかげ」

▽オリックス吉田正(1カ月前の右手首骨折からCSで復帰したばかり)「ゲームの中で今までの経験などで対応していくしかない。日本シリーズという舞台を勝ち取った。最後、優勝して日本一で終えたい」

▽オリックス海田(7回に救援して先頭マーティンに中前打を浴びて降板)「今日の結果は受け止めて次に生かすだけ。任されたイニングを抑えるだけ」

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