故郷の大声援を力に腕を振ったが、3年ぶりの先発2勝目はつかめなかった。日本ハム吉田輝星投手(21)が故郷秋田でプロ初の凱旋(がいせん)登板。「カナノウ旋風」に沸いた18年夏決勝以来となるこまちスタジアムの先発マウンドに立ち、楽天相手に4回まで1安打無失点の力投。だが打線の援護なく0-0の5回につかまり、4回1/3を4安打2失点で降板し、今季2敗目を喫した。

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こまちスタジアムは、やっぱり吉田輝星のホームだった。1回裏、マウンドへ上がると球場全体から拍手。ストライクを奪えば拍手が起き、アウトを奪えば手をたたくボリュームも上がる。1回2死から浅村に左翼へ安打を浴びたが、好返球で二塁封殺。楽天主催試合でも球場は、ため息から大歓声だ。金足農から日本ハムへ巣立っても、秋田県民の心は4年前から変わっていなかった。

故郷の温かな声援に包まれて、等身大の吉田が気持ちよく右腕を振った。「力まずに、手加減せず、ちょうどいいところで放れるようにしたい」。5日阪神戦(甲子園)では力んで初回から苦投。「もうグリグリ腕振っていくしかない感じでやったら、もう3回くらいでヘロヘロになった」という反省を生かし、力感なく威力十分の直球を初回から連発。少年時代に見て憧れた、プロの投手のすごさを体現していった。

10年前の12年5月、小学6年生だった吉田は同球場の左翼芝生席でヤクルト対巨人を観戦した。「友達と行って、レフトはジャイアンツ側だったんですけど、友達が阪神好きで…。何か僕も買ってと言われて、しょうがなく買ったんですよ、阪神のタオル。それで応援していたら、めちゃくちゃ周りのジャイアンツファンににらまれた」。それでも、めげずに「一番振り回していました」という吉田は、プロ野球選手に憧れた。

吉田 変化球に興味持ち始めて、球速とか150キロ投げる人がすごいなって思っていた頃。カッコよかったですね、プロ野球選手。

夢を実現し、巡ってきた故郷での先発登板は4回まで1安打無失点と好投も、5回1死二、三塁で太田に2点先制打を浴びた。続く武藤にも安打を浴びたところで降板。三塁側ベンチへ引き揚げる吉田に万雷の拍手が降り注いだ。堂々とした投げっぷりは、秋田の野球ファンを再びとりこにした。【木下大輔】

地元凱旋の日本ハム吉田輝星は5回楽天打線につかまる/ライブ速報中>>