優勝するチームには、往々に語り継がれる象徴的な試合がある。それを予感させるシーンだった。西武がクリーンアップの3者連続本塁打で接戦を制した。無安打だった4回2死。3番森友哉捕手(27)が8号ソロで均衡を破ると、4番山川穂高内野手(30)も38号で続いた。さらに5番呉念庭内野手(29)も5号アーチで締めた。チームは5安打も、この3連発が効き、1点差で逃げ切った。

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クリーンアップの3連発-。歴史的な混パの中で、頂点へと駆け上がる流れを加速させそうな勝ち方だった。西武打線はロッテ石川の前に完璧に抑えられていた。4回2死までは…。ノーヒットどころか、走者も出せなかった。ただ、それも嵐の前の静けさだったのかもしれない。沈黙を一気に、ド派手に打ち破った。

口火を切ったのは3番森だった。フルカウントからの8球目。低め142キロカットボールを捉え、森らしく左中間に運んだ。「完璧でした。めちゃくちゃ気持ちよかった」。均衡を破る1発は、まだ序章だった。

全打席で本塁打を狙うスタイルを貫く4番山川も続く。「狙ってましたね。ピッチャーががっくりしている場面でもう一丁」。粘りに粘って、フルカウントからの13球目。低めの139キロカットボールを左翼席中段に運んだ。許した初安打が初本塁打となった石川に見事にたたみかけた。ダイヤモンドを1周し、次打者の呉念庭へ言った。「3者連続行けよ」。

まだどよめき、余韻が冷めやらぬ中だった。主砲の言葉を授かった5番呉念庭が仕上げた。「狙ってました」。3球目。高めに浮いた127キロシンカーを逃さない。打球は右翼席に吸いこまれた。呉念庭は「森、山川さんの連続ホームランで、そういう雰囲気というか、流れというか乗せてもらいました。3者連続ホームランを打てて良かった」と胸を張った。得点はこれだけだったが、これで結果的に試合は決まった。

3連発といえば、85年阪神のバース、掛布、岡田のがあまりに有名だが、西武にとっても吉兆だ。前回は19年8月15日オリックス戦の源田、森、中村。前々回は18年9月24日楽天戦の浅村、山川、栗山になる。いずれも優勝したシーズン。辻監督は「格好の餌食だな。記事の」と笑いながら、「プラスに思うことがプラスになる」と受けとめた。大きな起爆剤となりそうな24球での3連発。本拠地ベルーナドームでの勝敗も37勝20敗となった。【上田悠太】

▼西武は4回に3番森、4番山川、5番呉念庭が続けて本塁打。西武の3者以上の連続本塁打は19年8月15日オリックス戦以来10度目。クリーンアップで記録したのは18年9月24日楽天戦以来で、2番からの4者連発を含め4度目。オールソロの3者連発の3点だけで勝ったのは04年8月8日ヤクルト(土橋→岩村→古田で3-2)以来で、西武は初めてだ。また、森が8球目、山川は13球目、呉念庭は3球目を本塁打。山川にとっては18年5月29日の12球目を上回る最も粘った1発で、10球以上粘った1発を含む3者連発は13年4月7日ヤクルト(岩村5球目→武内10球目→中村8球目)以来だった。

○…高橋が2年連続3度目となる2桁勝利をマークした。7回2/3を8安打2失点(自責1)。縦スライダーなど変化球を有効的に使った。4回1死満塁の場面では茶谷を三ゴロの併殺に仕留めるなど粘りの投球だった。「ホームランの貴重な3点を絶対に守り抜くという気持ちで投げた。絶対に勝ちたかった」と安堵(あんど)の表情だった。

○…約1カ月ぶりの1軍復帰となった平良が1点リードの9回を締めた。先頭の代打角中に中前打を許すも、バントを失敗させるなど後続をしっかり切った。右手中指痛が完治した右腕は「少しお休みをいただき、パワーがあり余っていた。いい直球を投げ込むことができた。迫力のある投球ができた。体の方はもう万全」と頼もしかった。