今オフから導入された「現役ドラフト」が9日、非公開で開催され、ロッテへはオリックスから大下誠一郎内野手(25)が加入することが決まった。

驚いた。率直に、今のロッテにドンピシャだと感じた。

アマチュア野球担当記者を務めていた19年、大船渡・佐々木朗希投手の希代の速球に魅了された。一方、打者のドラフト候補で最も魅了されたのが当時、白鴎大にいた大下だった。

栃木・小山のグラウンドを訪れた。風格がすごい。コーチかと思った。初対面なのに、まるで昔からの遊び仲間のよう。写真撮影をお願いした。「こんな感じでいいっすか?」。勝手にいきなり取り始めたポーズは、巨人原監督風のグータッチ風。こちらへの警戒心などまるでない。昭和の香り。こんな豪快な大学生がいるのかと驚かされた。

大学2年生で主将になったという。異例の抜てきについて、当時の黒宮監督は「自分の長男みたいな感じですよ。やんちゃ坊主だけど、人をまとめる力量はすごい。上級生と比べても統率力が群を抜いていた。なかなかいない人材です」と絶賛。阪神大山を輩出した黒宮監督は「勝負強さは大山の10倍」とも真顔で話していた。

当時、白鴎大にはドラフト候補が4人いた。しかし試合になると、どうしてもカメラを大下に向けてしまう。全力スイング、全力シャウト。撮っていて本当に楽しい。左翼ポジションから戻ってきたところを撮ろうとしたら、ちょこっとカメラ目線でちょこっと決め顔。そういえばその秋のリーグ戦、平成国際大のグラウンドにロッテのスカウトも訪れていた。

対面取材の時は、さほど口数は多くない。ケンドーコバヤシのような語り口。「勝負強さだけは自信あります。勝負、大好きなんで。ランナーがおる時はめっちゃ楽しい。ワクワクする。打てんとめっちゃ悔しい」。語りが熱くなると、敬語といわゆる“タメ口”が混じり出す。じわじわと大下らしさが出てきて、とても良かった。

「同じ学年のやつらと競っていてもダメなんで。常に上を見て行かんと。早くプロに行きたい。すごいピッチャーたちと勝負したいです」

他の大学生や高校生のような模範解答、優等生的な受け答えはほぼなかったように思う。途中で「ガハハハ」と笑い出していたような記憶もある。プロ野球はエンターテインメントの世界。こういう若者こそ、夢を届けるプロ野球選手になるべきだとさえ感じた。

多くの人が言う。「ロッテの選手は大人しい」「真面目な選手が多い」。担当記者としても「補強ポイントは即戦力投手」などと記事を書きつつも、本音では「本当は大下のような選手が一番必要なのでは」とずっと感じていた。

もちろん、右の強打者候補としてまず1軍ベンチに入ることからのスタート。そこさえクリアすれば、大下は千葉ロッテを変える存在になれる。そういえば、誕生日は佐々木朗と同じ11月3日だった。【ロッテ担当 金子真仁】

◆大下誠一郎(おおした・せいいちろう)1997年(平9)11月3日生まれ、福岡県出身。白鴎大足利2年のセンバツ(対東陵)で、春夏を通じ甲子園初の1試合4二塁打。白鴎大を経て19年育成ドラフト6位でオリックス入団。20年9月15日楽天戦で1軍初打席本塁打。171センチ、89キロ。右投げ右打ち。内野手。来季推定年俸800万円。

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