プロ初勝利を挙げた阪神村上頌樹投手(24)は一体、何がすごいのか。智弁学園(奈良)でバッテリーを組んだ岡沢智基捕手(24=Honda鈴鹿)、東洋大の同期で主将を務めた山崎基輝捕手(24=日本生命)が秘話を明かした。
当時から完成されていた伸びのある直球、プロ向きの強いメンタルを象徴するシーンとは-。【取材・構成=中野椋】
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衝撃だった。14年3月。入寮前の村上ら智弁学園の新入生は、同校の室内練習場に集まった。センバツ期間中で先輩は不在。コーチから「自由に練習していいぞ」と言われた。
岡沢 ピッチングをしようとなって。同期の17人中6人が投手。最後に投げた頌樹の球のレベルが、1人だけ違いました。
村上のボールを受けたのが、中学時代に捕手も経験していた岡沢だった。
岡沢 立ち投げで真っすぐだけ。ボールがホップしてくるんです。入学前なのに「僕らの代のエースは村上」だと、みんな笑うしかなかった。
数人がほどなく野手転向を決意。岡沢も投手から捕手への転向を余儀なくされ、「バケモノ」相手のブルペンに全身全霊をかけた。
岡沢 低めのボールが垂れないので、よく親指を突きました。普通の投手の感覚でいくと指が危ない。大学の時に知りましたけど、あいつの直球は2600回転以上ある。プロの平均でも2400~2500くらいだと思うので、やっぱり、エグかったんだなと。
そのホップする直球を、優勝した16年センバツでは最大限生かした。
岡沢 伸びるので、あえて高めを使いました。当てられたら一番飛ぶコースですけど打たれる気がしなかった。なんでも決め球にできたので、リードはパワプロ(野球ゲーム)の感覚。打たれたら捕手の責任だと思っていました。
捕手も恐怖する直球の伸び。村上の武器は高校時代から原型が完成していた。
▽智弁学園・小坂将商監督(高校時代の恩師) 先輩の活躍は今の部員たちに、何よりの励みになる。2安打完封。たいしたものです。ぼくが勘違いしていて、今朝『初勝利、甲子園で挙げろよ』みたいな激励のラインを送ったんです。そうしたらすぐに返事が来て『バンテリンです』と。でも『必ず勝ちます』と。言葉通りになりました。高校時代から直球がホップするような感じが一番の持ち味で、その感覚を自覚して投げなさいと話してきました。その直球が、今はもっとよくなっているんでしょうね。あと野手もしていたので、野手の気持ちが分かる。どんな投球をすれば守りやすいか、攻撃につながりやすいかを考えて投げられる投手です。試合後(法大同期の)安藤コーチもすぐにラインをくれました。多くの人に支えていただいて、今日の勝利がある。ありがたいことです。



