見えてきた! 9年ぶりの頂が!! 

巨人中川皓太投手(29)が炎のセットアッパーと化して、窮地を救った。「日本生命セ・パ交流戦」西武戦の9回、守護神・大勢が危険球退場となった緊急事態に、無死一、二塁の大ピンチから登板。三振と併殺打に打ち取り延長サヨナラ勝利へ導いた。昨季は腰痛で登板機会のなかった左腕が、西武のお株を奪う獅子奮迅の活躍を見せ、チームは今季最長タイとなる2度目の5連勝。交流戦単独首位に躍り出た。

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出番は突然だった。心配、怒気を含んだ声がスタンドから聞こえる異様な雰囲気の中で、中川のマウンドは巡ってきた。9回無死一、二塁。守護神・大勢が危険球退場となった。中川はブルペンのイスに腰かけ、テレビ画面で戦況を見つめていた。「マジか。こんなところで」と驚きつつ、腹を決めた。1度、作っていた肩を再び急ピッチで温めた。「割り切って、あとはボールに聞いてください」。いつもより高まる心臓の鼓動を感じながら、緊急登板に向かった。

金子には伝家の宝刀スライダー2球でバントもさせず。5球目、低め126キロスライダーで空振り三振に仕留めた。続く古賀は力で押した。追い込んでから、こちらも5球目の146キロ直球で三ゴロ併殺に打ち取った。グラブをたたき、左拳で渾身(こんしん)のガッツポーズをつくり、叫んだ。10球に魂を込めた。

「技術よりけがしない選手っていうのが強い、すごい選手」。腰痛に苦しみ、昨季は実戦登板なし。日常生活もつらく、靴下をはこうとしただけでも激痛が走った。「体の強さが一番。計算できない選手は戦力になれない。けがをマイナスに思うんじゃなくて、これからの人生につないで少しでも長くケガなく野球ができたら」。つらいリハビリの中で揺るがない信念を持ちながら前を向き続けた。

3軍では若手と汗を流しながら、助言を惜しまなかった。育成右腕京本にはウエートトレのやり方から細かくアドバイス。育成左腕富田にはスライダーを伝授した。若手に手本を示しながら、5月15日に支配下復帰。「エキサイティングな状況で、マウンドに上がれた。抑えたいって気持ち」と緊急登板で完璧な火消しを担った。7試合連続無失点で、チームは交流戦単独首位に浮上。巨人には中川がいる。【上田悠太】

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