少し窮屈そうにスイングを仕掛けた。それでも阪神大山悠輔内野手(29)の打球は速かった。0-0の5回無死満塁で一塁線を破る2点適時二塁打。岡田監督の退任報道でチームが揺れる中、4番はやるべき仕事をやるだけだった。
「みんながつないでくれたチャンスだったので、とにかくランナーをかえしたいという気持ちでスイングしました。タイムリーになってくれてよかったです」
決して派手ではない。フォア・ザ・チームを徹底する男らしい先制V打。ケイの内角151キロ直球を捉えた。CSファーストステージ第3戦の先発も見込まれる相手左腕を打ち砕き、予行演習は完了だ。9回には堀岡から左前打を放ち7試合ぶりのマルチ安打。上り調子で締めた。
レギュラーシーズンが終わった。6年ぶりに不振による2軍落ちも経験したプロ8年目。昨季は全143試合で座り続けた4番から外れる日も多かった。5年ぶりに15本塁打に届かず、6年ぶりに70打点に届かなかった。苦しんだ。それでも自分が大切にしてきたことは見失わなかった。
「チームが勝てばいい」「みんなで助け合えればいい」「1点でも多くとっていきたい」
ただ勝利のために。それだけを求めて言葉をつむいできた。この日も試合後、チームバスへ乗り込むまでの道のりで歩きながら丁寧に感情を込めた。
「レギュラーシーズンは今日が最後なので、今日の試合は自分の中ではすごく大事だと思っていましたし、そういう試合で勝って終われたのがよかったと思う。次はもうCSへ向けて、今から気持ちを切り替えてやっていかないといけないので。まだ戦いが終わったわけじゃないので、そこは僕だけではなくてチーム全員でCSへ向けて準備したいと思います」
12日から始まる短期決戦。見据えるのは下克上日本一だけ。背番号3はもう前を向いている。【中野椋】



