甲子園の4万2637人の観客が一瞬、静まりかえった。

0-0の8回2死二塁、カウント2-2からの6球目。阪神先発の村上頌樹投手(26)はオリックス代打森に対して、外角いっぱいに147キロ直球を投じた。静寂の中で判定を待った右腕。球審がストライクのジェスチャーをすると思わずとびあがり、ファンは大歓声だ。

「粘れた。ゼロに抑えられたから勝利につながったと思うので良かった」

球場表示された中で自身最遅とみられる球速58キロの超スローカーブなど、立ち上がりから緩急を生かして打者を翻弄(ほんろう)した。7回1死まで出塁を許したのは初回先頭の広岡に与えた四球のみ。無安打投球を続けたが「ノーヒットの意識はなかったですね。(遅球は)球場の空気を変えるためにも良い球だった」。7回1死から紅林に初安打、8回にも安打を許し、ともに得点圏に走者を進めるながら無失点。「この1点が勝負になると思った」。8回を2安打2四球6奪三振の快投だ。

“金曜日の男”としての自信を胸にマウンドに上がる。今季は初の開幕投手を任され、雨天中止でスライドした5月10日中日戦を除く10試合でカード頭の金曜日に先発。開幕戦は広島森下、2戦目は巨人戸郷とエース格相手の勝利で好発進し、ここまで両リーグトップの7勝で1敗だ。「去年火曜で良いピッチャーに勝てなかった。今年、金曜で勝てているのはうれしい」。7勝11敗の昨季からの成長を喜んだ。

自身8勝目は逃したが、得点を許さない投球でチームの勝利に貢献した。藤川監督は「表の攻撃と裏の攻撃が同じようにコピーしたようなゲーム展開。動きも出せない中で両投手の投げ合いは素晴らしいものがあった」とオリックス東とともに絶賛した。ただ、頭部に打球が直撃した石井への心配もあってか、試合後の村上に笑顔はなかった。「反省点の多い試合だった。次に生かしていきたい」。ほとんど完璧な結果にも満足はしない。【塚本光】

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