日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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巨人-阪神3連戦のカード初戦(22日)は、日本テレビ系が中継したOB解説がスポットを浴びた。岡田彰布と原辰徳。大学時代は大学日本代表でクリーンアップを組んだ。“伝統の一戦”で、選手、監督として名勝負を彩った。

08年の原巨人は、首位を独走した岡田阪神との最大13ゲーム差をひっくり返して逆転優勝を遂げた。23年岡田が率いた阪神は原巨人を18勝6敗1分けで圧倒し、日本一に上り詰めた。原はこのシーズン限りで監督を退任するのだった。

岡田は原が監督をしている巨人をライバル視はしたが、厳しい口調からは長い付き合いからの親近感が感じられた。また現場で拙者を見つけた原からは決まって「岡田さん、どうしてる?」と声をかけられた。

お互いが認め合っている間柄。岡田は10シーズンの監督生活で740勝(637敗50分け)、原は巨人17シーズンで1291勝(1025敗91分け)の白星を挙げた。2人合わせて通算2131勝の名将が戦況を追ったわけだ。

その解説が集約されたのは、巨人が0-7から追い上げ、3点差で迎えた8回裏だ。阪神ドリスは制球に苦しんでいた。また2日前の中日戦(甲子園)で7点差を逆転勝ち。今度はひっくり返される…。そんなムードも漂った。

だが1死一、二塁で増田陸が見逃し三振。ここで原は「見極めですね」と一言を発した。原の真意は十分に伝わってきた。この前のボール気味の球には空振りしていたからだ。相手投手を追い詰めることはできなかった。

そして2死一、二塁、佐々木の打席だった。6球目の高めのボール球を打ちにいってファウル。その瞬間、今度は岡田がボソッとつぶやいた。「振る?」…。一瞬だったので視聴者は聞き逃したかもしれない。

本人に確認していないが、この場面であのボール球を振ってしまうのか? と疑問を呈したのだ。ドリスの心理状態を含めた状況を理解しているのか? という意味合いだ。そして続く7球目は空振り三振で、巨人はそのまま敗れた。

結局、交流戦前の最終カードは、阪神が3タテを食らわした。岡田が師と仰いだ阪神初代日本一監督・吉田義男は「巨人に勝ち越すことが優勝の条件」とたたき込まれて育った。宿敵巨人のもろさを嘆いた1人だった。

「巨人がV9を達成できたのは徹底的に訓練された“川上イズム”が浸透していたからですわ。とにかくボール球を振らない。それが巨人の伝統だったんです。攻撃のときも、守備のときも基本に忠実だったんですが、ちょっと寂しいですな」

百戦錬磨だった生前の吉田には、9年連続リーグ優勝、9年連続日本一の巨人監督・川上哲治が率いた常勝軍団の強さをよく聞かされたものだ。「チームが弱くなると、たった1つのアウトをとることが、いかに難しいかを痛感しましたわ」と勝ちきる厳しさを語っていた。

川上は“球際”という言葉を編み出した。岡田と原が示唆したかったのは、この2文字に他ならない。阪神が選んだリーグ最多151四球に対し、巨人の97四球はリーグ最少。逆に与四球は、阪神がリーグ最少の107四球、巨人の131四球は2番目に多い(25日現在)。この“球際”に両軍が描くコントラストが表れている。【寺尾博和】(敬称略)