10日目に、綱とりの稀勢の里は松鳳山の立ち合い変化に反応できずに敗れた。「変化」で決まった-。これに、相撲ファンは複雑な反応を示した。対応できなかった大関を責める人、つまらない相撲だと松鳳山を非難する人や、真剣勝負ゆえだとかばう人。では、相撲関係者の思いはどうか。
松鳳山は一夜明けて「知り合いに『日本人を敵に回したな』と言われちゃいました」と苦笑いした。2人は同じ二所ノ関一門。審判部長でもある二所ノ関親方(元大関若嶋津)は一門の総帥として、稀勢の里の綱とりを気に掛けていた。対して松鳳山は愛弟子。複雑な表情の中で「あんなの、食うのがおかしいよ…」とせつなそうに言った。
一門の芝田山親方(元横綱大乃国)も大関に厳しかった。「論外。綱とりと言われる相撲じゃない。勝負だから、松鳳山だって何とか勝とうとするんだ」。
9日目に日馬富士を破った際「一瞬、自分が勝ったら一門から横綱が1人増えるなと思った」と話した嘉風が言う。「松鳳山が正しい。同じ部屋でもない自分の発言が良くなかった。じゃあ、終盤に大関と当たったら、負けるのかってことでしょ。そうじゃない」。
筋書きのない真剣勝負。だからこそ起こりえた一番。これもまた、相撲なり。【今村健人】


